2010年6月27日日曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第4回 「より良い変容とは?」 参加報告


Visionary Institute 2010 World Cafe第4回にて、初めてグループのリーダー(ホスト)を経験しました。
今回のテーマは、6月21日に行われた伊藤俊治教授の講義に基づくもので、「より良い変容とは?」 そして、その変容を起こすには何が必要か?でした。ここで言う、変容とは伊藤教授のお話で、「心というソフトウェアを大きく変えるのがメディア・アートである」という部分の「大きく変える」が変容(Transformation)だったと思います。さて、ここまで、3回参加して、また、今回リーダーを経験して疑問に思ったことが以下の通りです。
疑問:ワールド・カフェはブレーン・ストーミングか?
全員が意見を言って、その意見を批判しないという考え方はブレーン・ストーミングそのもの。しかし、ワールド・カフェはリーダーひとりを残してメンバーを入れ替えるという点が斬新。
疑問:テーブル・クロスに書かれた未加工のデータは整理して、清書すべきか?
未加工のデータはあとで振り返るときに重要になるのですが、要約として清書されたものは、翌朝配布すべきです。これは次の会話に反映するためで、また、この要約は、当然全員で共有します。
以下は未加工のテーブル・クロスの例。
以下はその清書した例。
最初のグループでの第一ラウンド
話し合いの流れは以下の通りです。
まずは、私たちのグループは「変容」の定義からはじめました。
項目1.変容には心理変容、行動変容が有ると思いますが、私たちは「心の変化」としました。
また、「変容」は結果で、「受容」は受け入れて取り込む。つまり、変容を起こすためのinputがこの質問となります。
項目2.そして、次に「より良い」について話し合いました。
良い心の変化とは:
前向きの心、思いやりの心、お互い様という心
では、悪い心の変化とは:
ネガティブな心
ただし、良い、悪いという基準は不変ではなく環境や時代背景に影響されるという意見がありました。
項目3.「より良く」なるために、そのままの自分で、無理しない範囲での変化としました。
項目4.最後に、「誰にとってより良い」のか。つまり、誰が主体となるのかですが、私たちは、「自分にとって」としました。
つまり、私たちのグループのテーマは「自分にとってより前向きで思いやりの有る心への変化を起こすには何が必要か?」になりました。
心の変化を起こすには、外発的動機付けと、内発的動機付けがありますが、外発的動機付けは、環境、出来事、経験などがあります。
また、内発的動機付けには、自己実現、知的好奇心を満足させるなどがありますが、私たちのグループは両方の面からの発言がありました。
これらを総合すると、私たちのグループのテーマは「自分にとってより前向きで思いやりの有る心への変化を起こすには、どんな外発的、内発的動機付けがありますか?」となります。
従って、私たちのグループの回答は:
外発的動機付け(刺激)という面では:
・自分を表現できる機会、場所
内発的動機付けという面では:
・他人との交流
・宇宙を学んで人の成り立ちを知り、大きな心を持つようになる(個人、個人の違いを尊重するようになる)
・時間(悪い想いででも時間が経てば良い思い出に変わる)
これらの私たちのグループの結論は、結果的に先日の伊藤俊治教授の「意識のイノベーション 未来を予見するアート」のお話と通ずるものでした。メディア・アートの目指すものも関係性の進化、インタラクション、コスモロジーの再生ですから、私たちの会話の中で無意識にこれらが現れたのかもしれません。
他グループで話されたことを加えた第二ラウンド
話し合いの流れは以下の通りです。
項目1関連.1つのグループでは、「変容」について、言葉として「変容」と「変化」とは異なり、
「変容」とは内面が変わった結果、様子が変わること。
「変化」とは外面的な姿、形が変わることであることをまず確認したそうです。
また、別のグループでは「変容」の例として、以下の2つが出てきた。
・人からキリストへ
・さなぎから蝶へ
項目2関連.また別のグループでは、「より良い」という基準は不変とか言う話ではなく個々人の価値観に依存するので、定義できない。
項目3関連.また、別のグループでは、「より良く」なるために、人生観、価値観が、がらっと変わる程度の変化であるとしたそうです。
項目4関連.更に別のグループでは、「誰にとってより良い」のかに関しては、「社会にとって」としたそうです。
これらを総合すると、他グループのテーマは「社会にとって価値観ががらっと変わるほどの心への変化を起こすには、どんな外発的、内発的動機付けがありますか?」となります。
他グループとの交わりでの回答は:
外発的動機付け(刺激)という面では:
・自分を表現できる機会、場所
内発的動機付けという面では:
・他人との交流
同じ価値観の者同士(イノベーションが起きづらい)
色々な価値観の人がバランスしている
1人だけ価値観が異なる者がいる(イノベーションが起きる可能性が高い)
五感を刺激する(一部外発的動機付けに相当する)
・宇宙を学んで人の成り立ちを知り、大きな心を持つようになる(個人、個人の違いを尊重するようになる)
・時間(悪い想いででも時間が経てば良い思い出に変わる)
ここでも、五感を刺激するという部分は、伊藤俊治教授のメディア・アートのお話の「体の感覚、情動、意識、無意識などのセンサーへのコンタクト」に通ずるものだと思います。
次回この結論からさらに踏み込むための、次の質問(下記「ワールド・カフェ」の本を参照)は次のようなものだと思います。
・次のステップに進むにあたって、お互いにどんなサポートができるでしょう?
・未来の状況に対して大きな違いを生み出すために、上記結論に対して今日どんな種をまいたらよいでしょうか?
・発言された様々な意見の背景から、どんなことが聴こえてきますか?
・このようなことで、何があなたにとって重要なのでしょうか?また、なぜあたなはそれを重要と思うのでしょうか?
・このようなことに対するジレンマ/機会は何ですか?
・あなたにとって本当に意味のあることはどんなものがあるのでしょうか?
・ここまでのところで得られた、最も大きな学習や洞察はなんでしたか?
疑問:各ラウンドで、その都度グループの対話の結論を出すのか?
今までの話し合いでは、他のグループでは最初の質問の「単語」の意味についての議論が盛り上がったりして、なかなか先に進まない場面が見られる。例えば、20分という限られた時間でテーマの結論を出すには、リーダーが仕切って合い対立する意見は、どちらかを選択して更に対話を深めるということをしないと結論に達しない。やりっぱなしならそれも良いが、何らかの結論は必要なので、リーダシップが求められると思う。
「ワールド・カフェ - カフェ的会話が未来を創る」アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス著では、会話のリーダーとして成功するための能力には以下のようなものが含まれると言っています。
・発見を促す環境を作り出すこと
早急に判断することを保留する
背景にある仮説や信念を探求する
・アイデアの間にある、思いがけない結びつきに耳を澄ます
・幅広い考え方に基づいた発言を奨励する
・共有された理解を明確にする
私の場合、いつもの会議の癖で時計を見ながら残り時間を考えて、のめりこみそうな議論はそのままにして結論の出やすい判断に無意識に誘導していたのかもしれません。その結果として、私たちのグループはこのような一応の結論を引き出しましたが、この例のように他グループの話を聞いていると、のめりこみそうな議論をしているところもあったような気がします。
疑問:そもそもワールド・カフェはどのような目的の会議に向いているのか?
「ワールド・カフェ」アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス著では、緊急の経営課題を解決するようなことを対話のテーマにはしないようです。私が、ワールド・カフェに興味を持ったのはそのような「緊急課題の会議に使ったらどうだろうか」でしたので、ちょっとがっかりしています。この本では、カフェの最善の結果は、重要な課題に関連して問うべき正しい質問を発見したり、自分の状況について初めて他の人々と一緒に考えたり、探求したりする機会をつくることであったりするようです。
疑問:対話中にテーブル・クロスにはどのようにまとめたらよいか?
まだ数回しか経験していないが、マインド・マップ風に書き留めるとチャートで悩まなくて良いので1つの候補。
以下が第一ラウンドの例。
以下が第二ラウンドの例。

テーマが難しかったので良かった?
今回は「良い変容とは?それはどうしたら出来るのか」というテーマで、前回のように次々とそれぞれの思いが語られるという訳にはゆきませんでした。まず、変容っていうのはどういうことかから始まりました。変容は、心の変容を言い、変化というのは外面が変わると捉えていいのではないか。では、良いという変容の基準は、そしてその度合いはどのように判断し、それは誰にとって良い変容なのかと絞り込んでゆきました。そして、ではそれを実現するには何が必要かという具合に対話を深めてゆけました。
他のグループとのメンバー交換後の対話もスムーズ
前回は他のグループとメンバー交換して対話を始めると、全く異なる視点の話が聞けるのですが、今回は他のグループも同じようなブレークダウンがなされたようです。つまり、結末としては同じような価値観の者同士の集団ではイノベーションが起きづらいのではないか。また、色々な価値観の人がいたとしても、バランスしているとやはり、イノベーションは起きないのではないか?つまり、1人だけ価値観が異なる者がいて、その人がパワーを出すことによって起きるのではないかというような流れになってゆきました。
自分にとってのより良い変容とは?
1人だけ価値観が異なるものがいるというのは、グループとして変容してゆくという視点でしたが、個人として変容するにはという対話はどうであったか。自分が前向きに変わってゆくきっかけは何か?自分を表現できる場が見つかったとき、他人との交流の中で自分を生かす方法を見つけたとき、他人から自分で気づかなかった良い点を指摘されたとき、そして、良くないことが起きて悪い変容をとげても、時間が経てば悪いことも忘れて次第に自分を取り戻してゆくというような対話もありました。
良い変容で思い出すこと
私はこのシリーズの第1回に参加するまえに時間がありましたので、推薦図書を読み込んでいました。その1つの「出現する未来」が今回のテーマにヒントを与えました。U運動という少し難解な理論でしたが、イノベーションが起きるには7つのプロセスを行うことが出来る7つの能力が必要ではないかと解いていました。
1. 保留
習慣的な思考の流れから自分自身を切り離すことにより、ありのままの姿が見えてそこから気づきがうまれる。
2. 転換
意識を転換し物事を全体から見る。その鍵は既存の見方を保留するだけではなく、見えているものの背後にある生成過程へと意識を「転換する」能力を磨くことである。
3. 手放す
古いアイデアや固執しようとする心を手放し、第3者的に物事を見て、心の内側から知が浮かび上がる心の奥深くに向う旅にでかける。
4. 受容する
未来から現代を見通し、自己と意思の変容を受容することにより、場が変化し、その場と一体となることにより、状況を形成している「力」に変化が生じる。
5. 結晶化
ビジョンを結晶化してゆく。ビジョンは思想ではなく、源(ソース)とその源にたえずつながる能力からうまれる。
6. プロトタイピング
新しいアイデアを具体化してテストしフィードバックに耳を傾ける。
7. システム化
新たなシステムを自分を通して実現し、大きな世界を共に作ってゆく。
結論としては、出現する未来は自分しだいで決まる。つまり、未来は自分の思うように変えられるということのようです。私もこれを信じたいと思いました。
WorldCafeでの変容
自分の意見に固執せず、他人の意見に耳を澄ませ、感じ取り、まずは受け入れる。参加者全員がそのような行動をとることにより、より多くの意見が出てきます。出揃ったようであれば、皆が共感できるような、もっと深く対話してみたいことを掘り下げてゆきます。これは、会社の会議に見られるような自分の意見を押し通すような、1人だけが話していて、それに賛同する意見しか出てこない場とは異なります。WorldCafeでは異なる意見は歓迎されます。
visionary Institute - 2010の索引ページに戻る