2010年8月11日水曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第6回 「未来を察知するホスピタリティ」 参加報告


2010年8月10日にアカデミーヒルズで開かれたVisionary Institute 2010 World Cafe第6回に参加しました。
対話のテーマは、8月4日にアカデミーヒルズで行われましたVisionary Institute 2010 Seminarでの、「存在のイノベーション 未来を察知するホスピタリティ」と題する山本哲士氏の講演をもとに行いました。
「日本が世界に貢献できることは何か?そのためには何が必要か?」
今回の私のチャレンジは各グループのテーブルクロスに書かれた対話記録を見て、どんな書き方がその場の対話を盛り上げたり、対話をわかり易く整理したりするのだろうかという点を考察しようと思います。つまり、第3者から見て分かるかどうかです。ホストは、対話の記録したり、対話を深める質問をしたりと重要な役割を果たすので、この考察を行いました
この考察を通じて、書き方によってその対話に参加しなかった人が見ても、結論に至る対話の中身と結論が分かり易い書き方とそうでない物があり、以下にそれをまとめました。
・それは対話をいかに短くまとめて書き留めるかであり、言ったまま書き留めるのではないことがポイントであることが再認識されました。
・テーマごとにグルーピングされていると分かり易い。
・色々なテーマで対話されていますが、その中でどれを取り上げて結論としたかは明記されていないとわからない。
・また細かいことですが、マジックの色使いも大切で黄色やオレンジは文章に使うには見づらくて向いていません。
・適切な、イラストは理解を深めることが確認されました。

これは、大事なことですが、終わったらその場でメンバーに合意事項を再確認して、まとめを遅くとも翌日には全員に送ることをしないと、テーブルクロスに書かれていることを後日見ても、まとめるのは難しく、また、結論に異を唱える人が出てくる可能性があります。
ワールド・カフェのよい所として、大勢での会議では特定の人が発言して結論が出てくるため、結論に納得できない人もでてくるのですが、ワールド・カフェでは、全員が発言して、他のグループで話し合われたことも仕入れてきて対話が深まり、皆で結論を導き出すので、皆が納得して結論が出ると言われています。今回は、第3者として客観的に見て、誰かの意見が検討されないまま、おき去られていないか、その意見が他のグループではどのように扱われているのかなどが考察できれば良いのですが、なかなか難しそうです。
前にも述べましたように、次回の私のチャレンジは1つのグループを定点観察してこのような状況を整理することです。
このアイデアは、次回のセミナーのスピーカーである松岡正剛氏の著書、「知の編集工学 - 朝日文庫」を読んでいて、その中にあった<編集的後景>、つまり、自分の考えに偏った観察ではなく、柔らかな流れのままに観察する境地を少しでも体験できればと思います。
グループ1(D)
日本は世界で唯一の被爆国であり、世界平和に貢献できるように、非核三原則をしっかり守ってゆく必要があります。
対話の過程では、初めに日本の独自性のあるものをそれぞれ出しあったようです。例えば、
・日本のわび、さび、マンガ、日本食などの文化
・まじめ、忍耐などの精神世界
・ハイブリッドなどの技術
このグループのまとめ方の特徴としては、1つ1つのテーマを短い言葉でわかりやすくまとめていることです。まるで、それぞれのテーマをポストイットに書いて縦横にきれいに貼ったような簡潔さです。
この短い言葉を、赤マジック、黒マジック、紫マジックと分けている理由は良くわかりません。多分、最初のメンバーで対話したことが黒で、その後、他グループへ言って話し合ったメンバーが帰ってきて報告されたことが、赤で書かれているのだと思います。
まとめる過程で、同じようなテーマを囲んで、それらにキーワードをつけているのは良いと思います。
たとえば、以下の項目を”心”、”和”とまとめています。
・相手を尊重する
・主役になりたがらない
・他者を受け入れる包容力
このグループのテーブルクロスからは、以上のような対話から、世界平和に絞った経緯はこのまとめからは分かりませんでした。
グループ1のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ2(G)
日本が世界に貢献できると思われる事として、技術、文化、芸術、精神世界、サービスなどが挙げられました。
これらで世界に貢献するには、相手がそれを求めているかを知り、また、日本が提供できるものを再認識する必要があります。例えば、電車で席を譲るような場合、相手が譲って欲しいのかを考えて席を譲るのがホスピタリティに結びつくものですが、相手の気持ちを知るには”愛”が必要です。
以上が結論ですが、他のグループの人が来ての気付きは、以下のようです。
・日本の”箸”や”風呂敷”などは多機能であり、日本の独自性が現れたこのような考え方も世界に貢献できる
・日本人は自信をなくしているが、日本には世界に誇れる技術や文化があり、もっと自信をもつ必要がある
・今の病院はサービス化されていて、ホスピタリティが不足しているのではないか
このグループは私がホストをしましたが、まとめ方としてはマインドマップ風に同じ項目をまとめていきました。手前味噌coldsweats01になりますが、後から見てわかり易いのではないかと思います。
改善点としては、色使いが単調で基本は青一色しか使っていないことで、次回はもっと計画的な色使いができるような心の余裕を持ちたいと思います。
グループ2のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ3(H)
日本が世界に貢献できるのは、世界平和(憲法9条)を世界に訴えることである。
対話の過程では、まず日本の良さを出しあったようです。
・外の世界は合理的で、冷たい父親のようなものである
・日本は温かく、母親のようなもの。
・日本の良いものには、能、生け花、茶の世界、箸のような文化がある
・空気を読む、曖昧さ、慈愛の心などの精神世界
このグループのテーブルクロスからは、結論がどれかは、分かりづらかった。
また、色々な色を使っていてカラフルですが、黄緑、オレンジのような色は遠目には見づらいので、文字として使うのは避けたほうが良いと思いました。
良い点としては、イラストがあつて見やすいことです。しかし、わかりやすいかというと??です。
グループ3のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ4
日本が世界に貢献できるのは、「はやぶさ」のような技術である。はやぶさは不良設定という機能をもつという特徴を持っています。日本人はアーキテクチャを考え出すより、現状の技術を改善することに優れているので、このようなことに自信を持って世界に伝えてゆくことが必要です。
対話の過程で日本の良さを話しあった。例えば:
・医療において西洋は病気と向き合うが、東洋は人と向き合う
・日本は独自性のある伝統と文化を持っている
こちらのまとめかたは、複数の人がまとめているので、それぞれの人の向きで円心状に書かれていて、若干みづらいようです。やはり、一人でまとめたほうが良いかと思います。
赤で書かれた、それぞれの項目はタイトルと例というまとめ方で見やすいと思います。
例えば以下のようです。
日本の独自性
伝統
文化
グループ4のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ5
日本は既に貢献しているのではないか?例えば
・化学技術
・医学、マンガとアニメの文化
・精神面(禅)とか
・外国人が日本に来たときに感じるサービスなどである
なお、対話の過程で日本人の良さを話しあった。
・技術的には小型化、最適化が得意
・日本人は窓口の人を信用する
・日本は唯一の被爆国なので世界平和、非核化をアピールする
テーブルクロスへのまとめ方としては見やすくてよいと思います。
また、関連している項目同士を矢印で示しているので、これも良いと思います。
以下のような連想するようなまとめかたも良いと思います。
世界に貢献できることは何?すでにしているのでは?
・化学技術
・医学
・アニメとかマンガの文化
・精神面(禅とか)
・サービス(日本に来たときに外国の方が感じる)
ここらへんを自覚しようよ。
グループ5のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ6
日本が世界の国々の人々に貢献できるのは、日本人のホスピタリティを伝えることである。
対話の過程で、日本の良さを話しあった。例えば:
・わび、さびのような日本独自の文化
・困っている人がいると助けてあげる気持ちを持っている
・きめ細かなサービス
こちらのまとめ方は、横書きに統一されていて、わかり易いほうだと思います。
しかし、複数の人が書いているので、ほかの人の書いたまとめはテーブルクロスを一回りしないと読めないので良くないと思います。
色使いは、やはり緑は見づらいのですが、結果的に対比的になって紫が見やすく効果的です。
グループ6のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合? 

グループ7
日本が世界に貢献できるというより、先ずは隣にいる人に気持ちよさを与えることである。
対話の過程で、世界とは、貢献とはについて話しあった。ここで、世界とは大きすぎるので、もっと具体的に考えると、隣人が浮かんできた。貢献できるものは、ホスピタリティと考えると、日本人だけが持っているものではないが、日本人はそれを自然と発揮できる
テーブルクロスは、黄色がまったくなにが書いてあるのか分からないので残念です。青も色がかすれているので見づらいのでこれも残念です。結果として、紫で書かれた結論が見やすくなっています。
グループ7のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ8
日本が世界に貢献するのに必要なものは、以下の5つがあがりました。
・近江商人のような公明正大さをよりどころにする
・自分の満足。100%はダメだができるだけ。
・売り手の満足より、買い手の満足を高めたり、買い手の満足より、売り手の満足を高めたり、場合によって使い分ける
・スピード。世界は未知なので先んじなければならない
・自己修練。例えば、”はやぶさ”のような技術
対話の仮定で、世界に役立つことに必要なのは何だろうと考えました。例えば:
・売り手、買い手の満足を考えた商売
・日本製品の不良率は低く、すばらしい
・勤勉な国民性
・日本人はそこそこで満足しない
・満足の基準の高さから、日本人はなかなか満足しない
全体にそれぞれの項目ごとにまとめられているので、見やすいはずなのですが、緑は文字としては見づらいと思います。紫が目だってわかりやすいです。ただし、紫が結論というわけでもないようです。
裏面を使って、5項目のまとめを書き上げたのは、とっさの良い判断だと思います。
グループ8のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

補足
8月4日にアカデミーヒルズで行われましたVisionary Institute 2010 Seminarでの、「存在のイノベーション 未来を察知するホスピタリティ」と題する山本哲士氏の講演を聞き逃した方のために、株式会社国際ホスピタリティ研究センターの方々が、当日のサマリーをして頂きました。以下がそのエッセンスです。
サービスとホスピタリティとは異なる。
サービスとは1対多で提供されるもので、いつでも、どこでも、だれにでも提供されます。
例えば、マクドナルドのように提供の仕方がマニュアル化されている
また、より多くの最低限の品質で売り上げをあげる
ホスピタリティとは1対1で提供されるもので、今、この時、この場で、この人に提供されます。
つまり、マニュアルはなく接待する人が接待される方のその場の状況に応じて提供されるため、提供された側はプライベートの快楽を感じます。
ホスピタリティの語源は「敵」。敵を満足させる緊張感を持ち、相手を満足させたことにより自分も満足するように振舞うことです。つまり、敵とはいつ、クレームを言い出すか分からない相手です。
また、以下のことが理解できれば、ホスピタリティを理解したことになると株式会社国際ホスピタリティ研究センターの方はおっしゃいました。
「非自己が他の非自己と働きあう非分離の自己技術の対的インターアクションの述語的環境がホスピタリティ」。
詳しく知りたい方は、以下の文献をご欄ください。
・推薦書籍のご紹介


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