2011年4月5日。招待された薄羽さんのオフィスのベランダにかぶさるようにして、もうじき盛りになる桜が部屋の明かりに照らされて、すばらしい雰囲気を醸しだしていました。桜の脇には竹が生えていてコントラストがすばらしい日でした。そんな、雰囲気の中、今年の1月までご一緒させて頂いた、すばらしい皆さんに再会できて楽しい時間をすごし、この時間が終わるのが惜しいという気持ちになった程でした。
清水先生は手作りで桜餅、桜の花の入った俵にぎり、よもぎの和菓子などを用意されました。あまりにもすばらしかったので、思わず携帯で写真を撮りました。その写真はその場の雰囲気を伝えるために加工してみました。そして、そこには、薄羽さんの用意された、新たな始まりにふさわしい北海道の開拓ビールの詰め合わせがあり、それらが振舞われました。
料理と会場の雰囲気作りはリサさんの手作りの料理と、そのすばらしい盛り付け、キャンドルの光、バックグラウンドミュージック、どれをとっても洗練されておりました。そして、多分暖かい赤ワインに何かすばらしい香りのするものが入ったものも、機会があればもう一度飲んでみたいと思いました。
20世紀の忘れ物を残したまま、21世紀に向けて何をすべきか、そのVisionを語るにふさわしい先生方をお迎えしてお話を聞き、それを対話を通じて新たなVisionを展開するVisionary Instituteに、当初はそのような深遠なテーマには気付かずに、参加者全員がそれぞれに対話に参加するという場の存在に自分の居場所を見つけて、自分なりのVisionが芽生えてきたのが今年の1月までのWorld Cafeでした。経済に始まり宇宙科学に終わるシリーズは完璧なシナリオでした。しかし、2011年3月11日に地震、津波そして、原発の事故が発生し、想定外の自然災害への危機管理という観点も必要ではないかというお話が皆さんの中から出てまいりました。
私も何か貢献しなければならないと考えたときに、自分の世代が経験してきたことを次の世代に伝えて、良い点は学んでもらい、よくない点はそのようにならないようにするという形の貢献ができるかと考えています。父親の世代は戦争を経験し、終戦後広島から横浜に出てきて、居を構え、生命保険会社に入り、会社とともに豊かになってゆき、働きづめでの56年の生涯に幕を閉じたのを見てきたものとして、私のように10社以上に時代の流れに乗って転職してきたものと比べてみると、昔のファミリーのような、ある意味窮屈な、ある意味、ダメの烙印を押されたら復活が難しいというような時代の良さ、悪さについての考えなどを伝えようと思います。そして社会が豊かになると物を製造してゆき、どんどん消費が伸びてゆく中で、楽をしてお金を儲ける金融商品に手を出して、そこからの利益が本業の製造よりも高い時期が一旦あると、そちらにばかり目が言ってしまうようになったそのときに、金融の破綻が来るともろにその影響を受けて破綻した会社が多くありました。そんな、20世紀から21世紀に伝えてゆくもの、今いるものがこれからどうすればよいかを対話する、それをWorldCafeは効果的に実現するにふさわしい方法でした。そのようなことの集大成作りに参加できることは、非常に楽しみなことです。
私がこのようにことに関われたのも、2009年の12月からアカデミーヒルズ 六本木ライブラリーのメンバーになったことがあったからでした。月数回行われるライブラリー・トークに、当時はほとんど参加させて頂き、そんな中でめぐり合ったのがこのVisionary InstituteセミナーとWorldCaseでした。テーマは経済、芸術、言葉のこれまでとこれから、ホスピタリティ、宇宙など色々な方面の話題をとりあげ、対話の基調には未来に向けて、今私たちは何をしておかなければならないかを考えた時間でした。対話に当たって参加者にはいくつかの戸惑いがありました。それは、未来とは10年後位の現実性のある間隔で考えるのか、次の世代、その先の世代が生きる世界を未来と呼ぶのかでしたが、これについては持続可能な行動、考え方という観点から考え、短期、中長期のベースとなる意見が多く出たように思います。
私は当初からWorldCafeという対話のやり方に興味を持ちました。会社の管理者研修などの場合、グループ作業が必ずあるのですが、そのときには声の大きい人、いつも発言する人が、10分くらいの間でグループの意見をまとめなくてはいけないという意識で、自分の意見や、数人の意見だけでまとめてしまうという、中身のないものがほとんどで、発表した時点で終わってしまうというもので、私は常に疑問に思っておりました。実際、WorldCafe予行演習となる第1回では、何の抵抗もなく、参加者全員が自分の意見を出していました。この体験を、これで終わりにするにはもったいないというのと、他のグループにメンバーが移っていって意見を代表して説明し、そのグループでの話を元のグループに持ち帰るという、全員がグループの代表として対話に参加し、グループの意見をグループ内でまとめて、各グループの代表が発表するという一連の体験を、なんとか形あるものに残したいという思いから、各グループのまとめたテーブルクロスを写真に取り、グループごとの発表のエッセンスを言葉にして、その当時、ちょうどはじめたブログにまとめるようになりました。このような対話に効率化は求めてはいけないのかもしれませんが、各グループのテーブルクロスを見ながら、各グループの発表を思い出すのは大変な作業でした。それは、テーブルクロスに書かれた意見が、少しでもまとめようとして書かれているのは分かりますが、それらの関係がグループ化されていなかったり、雑然と書かれていたので、多分、そのグループに参加された人達も、1週間後にそのテーブルクロスを見て何が話されたかを思い出すのに大変だろうと思いました。私はその当時マインドマップにも興味を持ちましたので、対話をグループごとにまとめてゆくという書き方でテーブルクロスを利用すれば、もっと頭の中が整理されてより有効な対話になるのではと思いました。しかし、マインドマップの本に書かれたマップはイラストやカラーリングできれいにまとまっているのですが、1つ1つの円の中には単語が書いてあるだけで文章は書かないので、これって自己満足以外の何者でもないと感じていました。そこで、考えをグループ化し同じ意見の深まりを枝を伸ばしてゆくという図の書き方を採用しつつも、円の中には出来るだけ短い文章(主語、述語を持つ)にして、テーブルクロスを、マップにするという作業をしました。幸いなことに、薄羽さんにメールで私の試みを紹介させて頂いたところ、皆さんにも紹介していただき、何人かの方からは、ブログを見ました、分かりやすくて良かったというような感想も頂きました。
薄羽さんはこのVisionary Instituteを、21世紀への贈り物として対話を通じてそれぞれの方が考える機会を企画、運営されてきて、当初からその成果を広く共有したいと言われていて、次のステップへのリーダーシップをとられました。その、思いに皆さんも共感し、これから、そのお手伝いが出来ればと考えられて、今日の集まりとなりました。21世紀への贈り物は私たち世代が考えるだけではなく、若手の視点からも重要ですので、今日参加された将来有望な若者、お二人とともにゴール目指して頑張りたいという思いを強くした日でした。これからの作業は、参加された多くの方達、それぞれの方が、違った観点での貢献をされましたので、分科会としてそれぞれの意見をまとめてゆくという薄羽さんの編集の延長にゴールがあるように見えます。
2013年12月3日には待望の書籍が出版されました。タイトルは「賢者の本」です。私のこのブログは私自身でAmazonに電子書籍化しました。