2010年8月11日水曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第6回 「未来を察知するホスピタリティ」 参加報告


2010年8月10日にアカデミーヒルズで開かれたVisionary Institute 2010 World Cafe第6回に参加しました。
対話のテーマは、8月4日にアカデミーヒルズで行われましたVisionary Institute 2010 Seminarでの、「存在のイノベーション 未来を察知するホスピタリティ」と題する山本哲士氏の講演をもとに行いました。
「日本が世界に貢献できることは何か?そのためには何が必要か?」
今回の私のチャレンジは各グループのテーブルクロスに書かれた対話記録を見て、どんな書き方がその場の対話を盛り上げたり、対話をわかり易く整理したりするのだろうかという点を考察しようと思います。つまり、第3者から見て分かるかどうかです。ホストは、対話の記録したり、対話を深める質問をしたりと重要な役割を果たすので、この考察を行いました
この考察を通じて、書き方によってその対話に参加しなかった人が見ても、結論に至る対話の中身と結論が分かり易い書き方とそうでない物があり、以下にそれをまとめました。
・それは対話をいかに短くまとめて書き留めるかであり、言ったまま書き留めるのではないことがポイントであることが再認識されました。
・テーマごとにグルーピングされていると分かり易い。
・色々なテーマで対話されていますが、その中でどれを取り上げて結論としたかは明記されていないとわからない。
・また細かいことですが、マジックの色使いも大切で黄色やオレンジは文章に使うには見づらくて向いていません。
・適切な、イラストは理解を深めることが確認されました。

これは、大事なことですが、終わったらその場でメンバーに合意事項を再確認して、まとめを遅くとも翌日には全員に送ることをしないと、テーブルクロスに書かれていることを後日見ても、まとめるのは難しく、また、結論に異を唱える人が出てくる可能性があります。
ワールド・カフェのよい所として、大勢での会議では特定の人が発言して結論が出てくるため、結論に納得できない人もでてくるのですが、ワールド・カフェでは、全員が発言して、他のグループで話し合われたことも仕入れてきて対話が深まり、皆で結論を導き出すので、皆が納得して結論が出ると言われています。今回は、第3者として客観的に見て、誰かの意見が検討されないまま、おき去られていないか、その意見が他のグループではどのように扱われているのかなどが考察できれば良いのですが、なかなか難しそうです。
前にも述べましたように、次回の私のチャレンジは1つのグループを定点観察してこのような状況を整理することです。
このアイデアは、次回のセミナーのスピーカーである松岡正剛氏の著書、「知の編集工学 - 朝日文庫」を読んでいて、その中にあった<編集的後景>、つまり、自分の考えに偏った観察ではなく、柔らかな流れのままに観察する境地を少しでも体験できればと思います。
グループ1(D)
日本は世界で唯一の被爆国であり、世界平和に貢献できるように、非核三原則をしっかり守ってゆく必要があります。
対話の過程では、初めに日本の独自性のあるものをそれぞれ出しあったようです。例えば、
・日本のわび、さび、マンガ、日本食などの文化
・まじめ、忍耐などの精神世界
・ハイブリッドなどの技術
このグループのまとめ方の特徴としては、1つ1つのテーマを短い言葉でわかりやすくまとめていることです。まるで、それぞれのテーマをポストイットに書いて縦横にきれいに貼ったような簡潔さです。
この短い言葉を、赤マジック、黒マジック、紫マジックと分けている理由は良くわかりません。多分、最初のメンバーで対話したことが黒で、その後、他グループへ言って話し合ったメンバーが帰ってきて報告されたことが、赤で書かれているのだと思います。
まとめる過程で、同じようなテーマを囲んで、それらにキーワードをつけているのは良いと思います。
たとえば、以下の項目を”心”、”和”とまとめています。
・相手を尊重する
・主役になりたがらない
・他者を受け入れる包容力
このグループのテーブルクロスからは、以上のような対話から、世界平和に絞った経緯はこのまとめからは分かりませんでした。
グループ1のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ2(G)
日本が世界に貢献できると思われる事として、技術、文化、芸術、精神世界、サービスなどが挙げられました。
これらで世界に貢献するには、相手がそれを求めているかを知り、また、日本が提供できるものを再認識する必要があります。例えば、電車で席を譲るような場合、相手が譲って欲しいのかを考えて席を譲るのがホスピタリティに結びつくものですが、相手の気持ちを知るには”愛”が必要です。
以上が結論ですが、他のグループの人が来ての気付きは、以下のようです。
・日本の”箸”や”風呂敷”などは多機能であり、日本の独自性が現れたこのような考え方も世界に貢献できる
・日本人は自信をなくしているが、日本には世界に誇れる技術や文化があり、もっと自信をもつ必要がある
・今の病院はサービス化されていて、ホスピタリティが不足しているのではないか
このグループは私がホストをしましたが、まとめ方としてはマインドマップ風に同じ項目をまとめていきました。手前味噌coldsweats01になりますが、後から見てわかり易いのではないかと思います。
改善点としては、色使いが単調で基本は青一色しか使っていないことで、次回はもっと計画的な色使いができるような心の余裕を持ちたいと思います。
グループ2のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ3(H)
日本が世界に貢献できるのは、世界平和(憲法9条)を世界に訴えることである。
対話の過程では、まず日本の良さを出しあったようです。
・外の世界は合理的で、冷たい父親のようなものである
・日本は温かく、母親のようなもの。
・日本の良いものには、能、生け花、茶の世界、箸のような文化がある
・空気を読む、曖昧さ、慈愛の心などの精神世界
このグループのテーブルクロスからは、結論がどれかは、分かりづらかった。
また、色々な色を使っていてカラフルですが、黄緑、オレンジのような色は遠目には見づらいので、文字として使うのは避けたほうが良いと思いました。
良い点としては、イラストがあつて見やすいことです。しかし、わかりやすいかというと??です。
グループ3のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ4
日本が世界に貢献できるのは、「はやぶさ」のような技術である。はやぶさは不良設定という機能をもつという特徴を持っています。日本人はアーキテクチャを考え出すより、現状の技術を改善することに優れているので、このようなことに自信を持って世界に伝えてゆくことが必要です。
対話の過程で日本の良さを話しあった。例えば:
・医療において西洋は病気と向き合うが、東洋は人と向き合う
・日本は独自性のある伝統と文化を持っている
こちらのまとめかたは、複数の人がまとめているので、それぞれの人の向きで円心状に書かれていて、若干みづらいようです。やはり、一人でまとめたほうが良いかと思います。
赤で書かれた、それぞれの項目はタイトルと例というまとめ方で見やすいと思います。
例えば以下のようです。
日本の独自性
伝統
文化
グループ4のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ5
日本は既に貢献しているのではないか?例えば
・化学技術
・医学、マンガとアニメの文化
・精神面(禅)とか
・外国人が日本に来たときに感じるサービスなどである
なお、対話の過程で日本人の良さを話しあった。
・技術的には小型化、最適化が得意
・日本人は窓口の人を信用する
・日本は唯一の被爆国なので世界平和、非核化をアピールする
テーブルクロスへのまとめ方としては見やすくてよいと思います。
また、関連している項目同士を矢印で示しているので、これも良いと思います。
以下のような連想するようなまとめかたも良いと思います。
世界に貢献できることは何?すでにしているのでは?
・化学技術
・医学
・アニメとかマンガの文化
・精神面(禅とか)
・サービス(日本に来たときに外国の方が感じる)
ここらへんを自覚しようよ。
グループ5のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ6
日本が世界の国々の人々に貢献できるのは、日本人のホスピタリティを伝えることである。
対話の過程で、日本の良さを話しあった。例えば:
・わび、さびのような日本独自の文化
・困っている人がいると助けてあげる気持ちを持っている
・きめ細かなサービス
こちらのまとめ方は、横書きに統一されていて、わかり易いほうだと思います。
しかし、複数の人が書いているので、ほかの人の書いたまとめはテーブルクロスを一回りしないと読めないので良くないと思います。
色使いは、やはり緑は見づらいのですが、結果的に対比的になって紫が見やすく効果的です。
グループ6のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合? 

グループ7
日本が世界に貢献できるというより、先ずは隣にいる人に気持ちよさを与えることである。
対話の過程で、世界とは、貢献とはについて話しあった。ここで、世界とは大きすぎるので、もっと具体的に考えると、隣人が浮かんできた。貢献できるものは、ホスピタリティと考えると、日本人だけが持っているものではないが、日本人はそれを自然と発揮できる
テーブルクロスは、黄色がまったくなにが書いてあるのか分からないので残念です。青も色がかすれているので見づらいのでこれも残念です。結果として、紫で書かれた結論が見やすくなっています。
グループ7のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

グループ8
日本が世界に貢献するのに必要なものは、以下の5つがあがりました。
・近江商人のような公明正大さをよりどころにする
・自分の満足。100%はダメだができるだけ。
・売り手の満足より、買い手の満足を高めたり、買い手の満足より、売り手の満足を高めたり、場合によって使い分ける
・スピード。世界は未知なので先んじなければならない
・自己修練。例えば、”はやぶさ”のような技術
対話の仮定で、世界に役立つことに必要なのは何だろうと考えました。例えば:
・売り手、買い手の満足を考えた商売
・日本製品の不良率は低く、すばらしい
・勤勉な国民性
・日本人はそこそこで満足しない
・満足の基準の高さから、日本人はなかなか満足しない
全体にそれぞれの項目ごとにまとめられているので、見やすいはずなのですが、緑は文字としては見づらいと思います。紫が目だってわかりやすいです。ただし、紫が結論というわけでもないようです。
裏面を使って、5項目のまとめを書き上げたのは、とっさの良い判断だと思います。
グループ8のテーブルクロスをMAPにまとめると、こんな具合?

補足
8月4日にアカデミーヒルズで行われましたVisionary Institute 2010 Seminarでの、「存在のイノベーション 未来を察知するホスピタリティ」と題する山本哲士氏の講演を聞き逃した方のために、株式会社国際ホスピタリティ研究センターの方々が、当日のサマリーをして頂きました。以下がそのエッセンスです。
サービスとホスピタリティとは異なる。
サービスとは1対多で提供されるもので、いつでも、どこでも、だれにでも提供されます。
例えば、マクドナルドのように提供の仕方がマニュアル化されている
また、より多くの最低限の品質で売り上げをあげる
ホスピタリティとは1対1で提供されるもので、今、この時、この場で、この人に提供されます。
つまり、マニュアルはなく接待する人が接待される方のその場の状況に応じて提供されるため、提供された側はプライベートの快楽を感じます。
ホスピタリティの語源は「敵」。敵を満足させる緊張感を持ち、相手を満足させたことにより自分も満足するように振舞うことです。つまり、敵とはいつ、クレームを言い出すか分からない相手です。
また、以下のことが理解できれば、ホスピタリティを理解したことになると株式会社国際ホスピタリティ研究センターの方はおっしゃいました。
「非自己が他の非自己と働きあう非分離の自己技術の対的インターアクションの述語的環境がホスピタリティ」。
詳しく知りたい方は、以下の文献をご欄ください。
・推薦書籍のご紹介


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2010年7月15日木曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第5回 「日本は変わった。変わるために努力したのだ」 参加報告


今回の対話テーマは「日本は変わった。変わるために努力したのだ。」と未来に言われるために何が必要か?
です。
最初に全体の結論から。以下の図は各グループの発表を1つのマップに全体の結論としてまとめてみました。

次に、今回のWorld Cafeで最後にそれぞれのグループのリーダーから発表された結果を図式化しました。
グループAの発表
1.異文化も含めた異なるものを受容する
2.少数派になることを恐れない
グループAの発表の図式化

グループBの発表
1.あこがれが必要
グループBの発表の図式化

グループCの発表
1.やる気を触発するリーダーが必要
グループCの発表の図式化
グループDの発表
1.職人(マイスター)を大事にする
グループDの発表の図式化
グループEの発表
1.お金が必要。文化と経済は両輪
グループEの発表の図式化
以下が、私がホストをつとめたグループEを定点観測した結果です。
セッション1(グループ内での対話)
1.変えようとした、または成功したリーダーが必要。 また、他力本願ではなく、自らがリーダーになるという心意気が必要
2.文化が必要。理由は、日本人が文化をきちんと理解できれば良くなるので
セッション1のテーブルクロスを図式化してみました
セッション2(ホストだけテーブルに残して他のテーブルへゆきお互いの話し合いを共有する)
1.自信が必要
.教育が必要。理由は、日本古来の文化を継承するのが大切だから
セッション2のテーブルクロスを図式化してみました
セッション3(元のテーブルへ戻って、行った先での話を共有する)
1.発信力が必要。日本人は楽しみながら積み重ねていって自信になる
2.外の情報を取り入れることが必要
3.サブカルチャーの輸出が必要
セッション3のテーブルクロスを図式化してみました
セッション4(セッション3までのことを踏まえてテーブル内で更に対話した)
1.教育が必要
2.日本ならではのアイデンティティが必要
セッション4のテーブルクロスを図式化してみました

2010年7月9日金曜日

Visionary Institute 2010 Seminar 第4回 福原義春氏「未来をつくるイノベーションのための文化資本」 サマリー


今回のお話は株式会社資生堂名誉会長 福原義春氏の「未来をつくるイノベーションのための文化資本」と題しての講演で、つい2時間ほど前に終わりましたので、記憶がさめやらぬまに記録しました。
日本の経済はグローバルでの地位が、バブル期をピークとしてかなり下落している。この状況を改善するには日本独特の文化にてこ入れをして、前面に出して経済活動をすることが重要であるとおっしゃっておられました。
以下は、お話のキーワードをメモしたものです。
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2010年7月5日月曜日

「だから人は本を読む」福原義春著 東洋経済新報社を読んで


1人の人が、その人生で経験できる事は限られている。だから本を読むことで、先人の知恵、経験などを学ぶべきである。いづれ「人はどう生きるべきか」を考えることがある。そんな時のヒントが本の中にある。だから、本は暇な時に読むと考えるのではなく、時間を作ってでも読むものと言っておられると思います。
幾つか印象に残ったところのうち3つを抜粋してご紹介します。
1つめは、画家ゴーギャンは失意のうちに世を去る5年前に完成させた大作に
われわれはどこから来たのか
われわれは何者か
われわれはどこへ行くのか
と書きつけた。この人間にとっての最終の問いの答えも、それこそ多くの本の中に少しづつ埋もれている。ゴーギャンの生き方だってモームの「月と六ペンス」という素晴らしい作品に生き生きと 描写されているのだ。
2つめは、やなせたかしさんが、その本質的な思いを子供達に伝えようとしているということで、「アンパンマンのマーチ」の一部を紹介されている。
そうだ うれしいんだ
生きる よろこび
たとえ 胸の傷がいたんでも
なんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられない なんて
そんなのは いやだ!
3つめは、著者が資生堂の社長をしている間に、会社が創業120年の記念の年を迎えるにあたって、「木を植えた人」という本を、全世界の社員に贈った。この本は日々コツコツとどんぐりの種を蒔き、成長した木が、やがては大きな森になり人々の役にたったという話で世界中の多くの言語に翻訳されているので、その国の言語の本を配り、1つの目的に向かって急がずに絶えざる努力をすれば思いがけない成果が現れるというメッセージを伝えた。
以上が私の特に印象に残った部分です。
また、著者は「生きることは学ぶことだ」、つまり、人というのは生きている間中、学んでいるのだと一貫して思ってきたと言っておられます。この本のタイトル「だから人は本を読む」はそんな思いから付けられたものと思います。
著者はこの本の中では14冊の本を推薦しておりますが、以前、書店の企画で三冊の本を推薦するというブックフェアで著者が推薦したのが、以下の3冊でした。
1.ラ・ロシュフコー箴言集 (人間の真理)
2.ドラッカー「企業とは何か」 (企業の真理)
3.ご冗談でしょう、ファインマンさん (人生の真理)
・推薦書籍のご紹介

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2010年6月27日日曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第4回 「より良い変容とは?」 参加報告


Visionary Institute 2010 World Cafe第4回にて、初めてグループのリーダー(ホスト)を経験しました。
今回のテーマは、6月21日に行われた伊藤俊治教授の講義に基づくもので、「より良い変容とは?」 そして、その変容を起こすには何が必要か?でした。ここで言う、変容とは伊藤教授のお話で、「心というソフトウェアを大きく変えるのがメディア・アートである」という部分の「大きく変える」が変容(Transformation)だったと思います。さて、ここまで、3回参加して、また、今回リーダーを経験して疑問に思ったことが以下の通りです。
疑問:ワールド・カフェはブレーン・ストーミングか?
全員が意見を言って、その意見を批判しないという考え方はブレーン・ストーミングそのもの。しかし、ワールド・カフェはリーダーひとりを残してメンバーを入れ替えるという点が斬新。
疑問:テーブル・クロスに書かれた未加工のデータは整理して、清書すべきか?
未加工のデータはあとで振り返るときに重要になるのですが、要約として清書されたものは、翌朝配布すべきです。これは次の会話に反映するためで、また、この要約は、当然全員で共有します。
以下は未加工のテーブル・クロスの例。
以下はその清書した例。
最初のグループでの第一ラウンド
話し合いの流れは以下の通りです。
まずは、私たちのグループは「変容」の定義からはじめました。
項目1.変容には心理変容、行動変容が有ると思いますが、私たちは「心の変化」としました。
また、「変容」は結果で、「受容」は受け入れて取り込む。つまり、変容を起こすためのinputがこの質問となります。
項目2.そして、次に「より良い」について話し合いました。
良い心の変化とは:
前向きの心、思いやりの心、お互い様という心
では、悪い心の変化とは:
ネガティブな心
ただし、良い、悪いという基準は不変ではなく環境や時代背景に影響されるという意見がありました。
項目3.「より良く」なるために、そのままの自分で、無理しない範囲での変化としました。
項目4.最後に、「誰にとってより良い」のか。つまり、誰が主体となるのかですが、私たちは、「自分にとって」としました。
つまり、私たちのグループのテーマは「自分にとってより前向きで思いやりの有る心への変化を起こすには何が必要か?」になりました。
心の変化を起こすには、外発的動機付けと、内発的動機付けがありますが、外発的動機付けは、環境、出来事、経験などがあります。
また、内発的動機付けには、自己実現、知的好奇心を満足させるなどがありますが、私たちのグループは両方の面からの発言がありました。
これらを総合すると、私たちのグループのテーマは「自分にとってより前向きで思いやりの有る心への変化を起こすには、どんな外発的、内発的動機付けがありますか?」となります。
従って、私たちのグループの回答は:
外発的動機付け(刺激)という面では:
・自分を表現できる機会、場所
内発的動機付けという面では:
・他人との交流
・宇宙を学んで人の成り立ちを知り、大きな心を持つようになる(個人、個人の違いを尊重するようになる)
・時間(悪い想いででも時間が経てば良い思い出に変わる)
これらの私たちのグループの結論は、結果的に先日の伊藤俊治教授の「意識のイノベーション 未来を予見するアート」のお話と通ずるものでした。メディア・アートの目指すものも関係性の進化、インタラクション、コスモロジーの再生ですから、私たちの会話の中で無意識にこれらが現れたのかもしれません。
他グループで話されたことを加えた第二ラウンド
話し合いの流れは以下の通りです。
項目1関連.1つのグループでは、「変容」について、言葉として「変容」と「変化」とは異なり、
「変容」とは内面が変わった結果、様子が変わること。
「変化」とは外面的な姿、形が変わることであることをまず確認したそうです。
また、別のグループでは「変容」の例として、以下の2つが出てきた。
・人からキリストへ
・さなぎから蝶へ
項目2関連.また別のグループでは、「より良い」という基準は不変とか言う話ではなく個々人の価値観に依存するので、定義できない。
項目3関連.また、別のグループでは、「より良く」なるために、人生観、価値観が、がらっと変わる程度の変化であるとしたそうです。
項目4関連.更に別のグループでは、「誰にとってより良い」のかに関しては、「社会にとって」としたそうです。
これらを総合すると、他グループのテーマは「社会にとって価値観ががらっと変わるほどの心への変化を起こすには、どんな外発的、内発的動機付けがありますか?」となります。
他グループとの交わりでの回答は:
外発的動機付け(刺激)という面では:
・自分を表現できる機会、場所
内発的動機付けという面では:
・他人との交流
同じ価値観の者同士(イノベーションが起きづらい)
色々な価値観の人がバランスしている
1人だけ価値観が異なる者がいる(イノベーションが起きる可能性が高い)
五感を刺激する(一部外発的動機付けに相当する)
・宇宙を学んで人の成り立ちを知り、大きな心を持つようになる(個人、個人の違いを尊重するようになる)
・時間(悪い想いででも時間が経てば良い思い出に変わる)
ここでも、五感を刺激するという部分は、伊藤俊治教授のメディア・アートのお話の「体の感覚、情動、意識、無意識などのセンサーへのコンタクト」に通ずるものだと思います。
次回この結論からさらに踏み込むための、次の質問(下記「ワールド・カフェ」の本を参照)は次のようなものだと思います。
・次のステップに進むにあたって、お互いにどんなサポートができるでしょう?
・未来の状況に対して大きな違いを生み出すために、上記結論に対して今日どんな種をまいたらよいでしょうか?
・発言された様々な意見の背景から、どんなことが聴こえてきますか?
・このようなことで、何があなたにとって重要なのでしょうか?また、なぜあたなはそれを重要と思うのでしょうか?
・このようなことに対するジレンマ/機会は何ですか?
・あなたにとって本当に意味のあることはどんなものがあるのでしょうか?
・ここまでのところで得られた、最も大きな学習や洞察はなんでしたか?
疑問:各ラウンドで、その都度グループの対話の結論を出すのか?
今までの話し合いでは、他のグループでは最初の質問の「単語」の意味についての議論が盛り上がったりして、なかなか先に進まない場面が見られる。例えば、20分という限られた時間でテーマの結論を出すには、リーダーが仕切って合い対立する意見は、どちらかを選択して更に対話を深めるということをしないと結論に達しない。やりっぱなしならそれも良いが、何らかの結論は必要なので、リーダシップが求められると思う。
「ワールド・カフェ - カフェ的会話が未来を創る」アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス著では、会話のリーダーとして成功するための能力には以下のようなものが含まれると言っています。
・発見を促す環境を作り出すこと
早急に判断することを保留する
背景にある仮説や信念を探求する
・アイデアの間にある、思いがけない結びつきに耳を澄ます
・幅広い考え方に基づいた発言を奨励する
・共有された理解を明確にする
私の場合、いつもの会議の癖で時計を見ながら残り時間を考えて、のめりこみそうな議論はそのままにして結論の出やすい判断に無意識に誘導していたのかもしれません。その結果として、私たちのグループはこのような一応の結論を引き出しましたが、この例のように他グループの話を聞いていると、のめりこみそうな議論をしているところもあったような気がします。
疑問:そもそもワールド・カフェはどのような目的の会議に向いているのか?
「ワールド・カフェ」アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス著では、緊急の経営課題を解決するようなことを対話のテーマにはしないようです。私が、ワールド・カフェに興味を持ったのはそのような「緊急課題の会議に使ったらどうだろうか」でしたので、ちょっとがっかりしています。この本では、カフェの最善の結果は、重要な課題に関連して問うべき正しい質問を発見したり、自分の状況について初めて他の人々と一緒に考えたり、探求したりする機会をつくることであったりするようです。
疑問:対話中にテーブル・クロスにはどのようにまとめたらよいか?
まだ数回しか経験していないが、マインド・マップ風に書き留めるとチャートで悩まなくて良いので1つの候補。
以下が第一ラウンドの例。
以下が第二ラウンドの例。

テーマが難しかったので良かった?
今回は「良い変容とは?それはどうしたら出来るのか」というテーマで、前回のように次々とそれぞれの思いが語られるという訳にはゆきませんでした。まず、変容っていうのはどういうことかから始まりました。変容は、心の変容を言い、変化というのは外面が変わると捉えていいのではないか。では、良いという変容の基準は、そしてその度合いはどのように判断し、それは誰にとって良い変容なのかと絞り込んでゆきました。そして、ではそれを実現するには何が必要かという具合に対話を深めてゆけました。
他のグループとのメンバー交換後の対話もスムーズ
前回は他のグループとメンバー交換して対話を始めると、全く異なる視点の話が聞けるのですが、今回は他のグループも同じようなブレークダウンがなされたようです。つまり、結末としては同じような価値観の者同士の集団ではイノベーションが起きづらいのではないか。また、色々な価値観の人がいたとしても、バランスしているとやはり、イノベーションは起きないのではないか?つまり、1人だけ価値観が異なる者がいて、その人がパワーを出すことによって起きるのではないかというような流れになってゆきました。
自分にとってのより良い変容とは?
1人だけ価値観が異なるものがいるというのは、グループとして変容してゆくという視点でしたが、個人として変容するにはという対話はどうであったか。自分が前向きに変わってゆくきっかけは何か?自分を表現できる場が見つかったとき、他人との交流の中で自分を生かす方法を見つけたとき、他人から自分で気づかなかった良い点を指摘されたとき、そして、良くないことが起きて悪い変容をとげても、時間が経てば悪いことも忘れて次第に自分を取り戻してゆくというような対話もありました。
良い変容で思い出すこと
私はこのシリーズの第1回に参加するまえに時間がありましたので、推薦図書を読み込んでいました。その1つの「出現する未来」が今回のテーマにヒントを与えました。U運動という少し難解な理論でしたが、イノベーションが起きるには7つのプロセスを行うことが出来る7つの能力が必要ではないかと解いていました。
1. 保留
習慣的な思考の流れから自分自身を切り離すことにより、ありのままの姿が見えてそこから気づきがうまれる。
2. 転換
意識を転換し物事を全体から見る。その鍵は既存の見方を保留するだけではなく、見えているものの背後にある生成過程へと意識を「転換する」能力を磨くことである。
3. 手放す
古いアイデアや固執しようとする心を手放し、第3者的に物事を見て、心の内側から知が浮かび上がる心の奥深くに向う旅にでかける。
4. 受容する
未来から現代を見通し、自己と意思の変容を受容することにより、場が変化し、その場と一体となることにより、状況を形成している「力」に変化が生じる。
5. 結晶化
ビジョンを結晶化してゆく。ビジョンは思想ではなく、源(ソース)とその源にたえずつながる能力からうまれる。
6. プロトタイピング
新しいアイデアを具体化してテストしフィードバックに耳を傾ける。
7. システム化
新たなシステムを自分を通して実現し、大きな世界を共に作ってゆく。
結論としては、出現する未来は自分しだいで決まる。つまり、未来は自分の思うように変えられるということのようです。私もこれを信じたいと思いました。
WorldCafeでの変容
自分の意見に固執せず、他人の意見に耳を澄ませ、感じ取り、まずは受け入れる。参加者全員がそのような行動をとることにより、より多くの意見が出てきます。出揃ったようであれば、皆が共感できるような、もっと深く対話してみたいことを掘り下げてゆきます。これは、会社の会議に見られるような自分の意見を押し通すような、1人だけが話していて、それに賛同する意見しか出てこない場とは異なります。WorldCafeでは異なる意見は歓迎されます。
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2010年6月25日金曜日

Visionary Institute 2010 Seminar 第3回 伊藤俊治氏「意識のイノベーション 未来を予見するアート」 サマリー


2010年6月21日 東京藝術大学先端芸術表現科教授 伊藤俊治氏の講演 「意識のイノベーション - 未来を予見するアート」
当日のお話のサマリーを作ってみました。ただし、お話をお聞きしながら書き起こしたので、聞き違いや、勘違いがあると思いますが、ご容赦ください。

伊藤教授の長いお話を、あえてざっくりとまとめてみました。以下のお話は1時間半の持ち時間の最後の2分程度でお話されたことなので、今日のまとめではないかと思いました。
我々には、自分で気付かないセンサーが多くあり、想像以上に複雑なシステムを持っている。自分という閉鎖系システム(心というソフトウェア)を、体の感覚、情動、意識、無意識などのセンサーへのコンタクトを通じて大きく変えることが出来るのが、メディア・テクノロジーと言える。このメディア・テクノロジーによって、人間が、どこまでそれをコントロール出来るのかがアートとメディアの交差点で行われている。多分、教授がおっしゃりたいのは、すばらしい未来は健全な心をコントロールすることであり、メディア・アートはその重要なパートを担っているということだと思います。
はじめに: 未来を感知し、創造性を掘り起こすために
ジェロール・グレンという未来学者が「Future mind」という本の中で、ポスト情報化社会は“人間の意識とテクノロジーがうまく組合わされてゆく時代”。それが健全な個人の自己認識と社会をつくる基本となると言われた。
アート(ラテン語のアルス)は「芸術」と「技術」という両方の意味。その融合が分断されて、環境問題、都市問題を引き起こしているので、意識とテクノロジーを再統合しなければならない。
メディア・テクノロジーは高密度な情報化社会、高度な資本主義社会に生きる人間の心理、感覚、情動、意識への新しい研究で、アートは未来を予見する役割を果たしてきた。
伊藤教授は20世紀美術の研究をされていたが、1980年末、NTTのICC(Inter Communication Center)の構想、基本設計に参画。
お話の具体的な流れは…
アートの動向を考えるポイント
1 新たな共同創造性
2 関係性の進化
3 コスモロジーの再生
4 内部情報の変容
これらから導き出される
未来創造へのヴィジョン
1 新たな共同創造性
1990年代後半から2000年代に、芸術と科学を結びつける文化機関、施設が次々と生まれる。アートが一人の天才の個人作業から、共同作業を前提とするコンピュータ・インタフェースを作り上げて、他者との交流(ワークショップ、プロジェクト)によって、新たな創造性を作り上げた。コンピュータにより、共有記憶を共感化させることにより共同創造性は、より一層活性化される。新しい流れの始まりは、1990年位にベルリンで誕生したART+COMという共同研究ではないか。これは、アーティスト、映画作家、建築家、デザイナー、科学者、社会学者という色々な専門化が40人~50人位所属していて、プロジェクト毎に学際的なチームを組む方式のメディア・アーティスト集団でした。彼らの特徴は、アンチ・エキスパート・システムを敷いている。それぞれの狭いジャンルに偏向しそうな専門性をコントロールして、互いの専門領域の境界を行き来して、新しい物づくりのプロセスを電子メディアを媒介にして生み出す。
映像例: 三上晴子 / Seiko Mikami「Desire of Codes|欲望のコード」

共同創造性の例で、様々な人が関与して作られた。空間が監視カメラ、映像で生命化され、カメラから得られた個人情報がデータベース(コード)化される高密度な現代社会の様相が空間インスタレーションとして凝縮されて、提示されている。欲望のコードは今月発表されたばかりの作品で。このプロジェクトには、建築家の市川創太さん、東大の広域科学専攻で池上高志さん、アーティストのクワクボリョウタさん、山口のインターラボの人たちとか、様々な人が関与して共同で作り上げた作品。バックミン・スター・フラーという建築家が、専門化することが、なぜいけないのかということについて、生命の種の絶滅は、いきすぎた細分化、分化、専門化にもたらされる統合する能力の欠如が理由と述べている。
2  関係性の進化
言語は知覚を決定し、意識の構造を決定している。ネットワーク社会では、我々の心身を構成している言語構造は崩れ始めている。ネットワークが個人をコントロールしていて、個人がネットワークをコントロールしていると思うのは幻想である。遠く離れた個人の精神がネットワークの中に循環する新たな生命系が存在しなければならない。メディア・アートの世界でも、人工生命の問題が多く表れていたがコミュニケーション・ネットワークをどのように生命化させて、うまく循環させるかという事と深いつながりがあった。
3 コスモロジーの再生
Charlotte Davies は Osmose で、東洋の「瞑想法」や「呼吸法」を取り入れて、メディテーションでの精神状況をこの作品で生み出したかった。この作品はミクロコスモス(自分の身体)とマクロコスモス(宇宙)を全体として関与させ共振させて結び付けている。また、空間の移動により、場の質が変わってゆく(従来と異質な空間に入る)ことを現している。最近放映されたアバターは、シャー・デイビスのOsmoseの影響を受けていると思われる。
映像例: Charlotte Davies «Osmose» 

我々を支えている平衡感覚、呼吸、重心移動などを利用することでデリケートな没入感覚を生み出している

体験者は世界の中の自分を気付く。これを体験するのは東洋の瞑想法と同じような考えである。このシステムでは、息を大きく吸い込むと、空間の中で舞い上がり、息を吐くと、深く沈みこんでゆく。重心を移動して自分の方向を変えたりする。自分の内部感覚をインタフェースにしている事が、この作品のポイント。
4  内部情報の変容
人とコンピュータのインタラクションの三段階
第一段階:テキスト・ベース(例えば、e-mail)。
第二段階:GUIが進化し、テレコミュニケーションと結びつき、遠隔地と簡単に結びつく(例えば、テレビ会議)。
第三段階:言語志向ではなく、3次元、4次元のように没入できる合成空間がネットワーク化される論理的世界にともに集合できる。現在は第一段階と第二段階が共生しているような段階にある。これからの第三段階は体験を共有する世界である。第三段階ではポスト・シンボリック・コミュニケーションの世界である。つまり、ネットワークが整備されると言語的な空間ではなく何千人でも没入できる同じ論理空間に集合できる。第二段階から第三段階へ向かう世界をアートであらわしたものがCAVEと呼ばれるシステム。
映像例: CAVE

共同で製作された第二段階から第三段階へ向かう世界をアートで表した作品。当時では高度な3Dメガネをつけて等身大の人形をインタフェースとして人間に眠っている本能の活性化や原記憶を呼び覚ます人間の身体と記憶術をテーマにしてそれを美学的、哲学的に表現しようとした作品。
未来創造へのヴィジョン
ヒューマン・インタフェースの研究者であるウイリアム・ブリッケンは「心理学や精神分析学は、新しいメディア空間にとっての物理学である」と言った。つまり、物理学は物理的な領域を支配する法則を明らかにするもので、心理学は人間の心の領域を支配する法則を明らかにしようとするものです。メディア・アートの世界で重要なのは人間の心や精神のメカニズムを知ることである。自分という閉鎖系のシステム(心というソフトウェア)を、体の感覚、情動、意識、無意識などへのコンタクトを通じて大きく変えることが出来るのが、メディア・テクノロジーと言える。
人間の心や精神のメカニズムを知るという学問や体系を持っていないというのが現状。コンピュータサイエンスも、このようなことをベースにする必要があると思うが、なかなかそれが出来ていないというのが現実である。

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2010年6月24日木曜日

Visionary Institute - 2010 WorldCafe第4回「未来を予見するアートとは?」の推薦図書を読んで

Visionary Institute 2010 World Cafe 第4回 「より良い変容とは?」の推薦図書で「電子美術論」を読みながらノートにまとめた内容です。

薄羽さんからこの回に伊藤氏の講演のサマリを発表するというご依頼を受けましたので、講演の前に課題図書を読んで、そのサマリをノートに書き留めましたが、難しい!?というのが実感でした。そのときに、薄羽さんの今回のお題は何かなとは思いましたが、素直に今回の案内にあった「時代の先端技術とアートの関係性を通じて、私達の未来と存在を考察・対話します」に沿って、本を見直し準備致しました。そのなぐり書きのノートが以下のとおりです。

WorldCafe 第4回 課題図書 「電子美術論」 伊藤俊治著 NTT出版 1999年3月のまとめ





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