2011年7月13日水曜日

Visionary Institute 緊急セミナー 佐治晴夫氏「これまでの日本・これからの日本」リベラルアーツから創造する未来の価値 サマリー


今回、7月11日の六本木ヒルズでのご講演は、3月11日の東日本大震災から4ヶ月が過ぎたこの日に東日本大震災を振り返り、これからどのようにして行くべきかについて、宇宙と物理を専門とされ、音楽にも詳しい、まさにリベラルアーツを語るにふさわしい佐治晴夫先生がお話をされました。
まずは、自分が思っている自分と他人から見える自分とは異なっている。それ故、自分のこと(地球のこと)を知っていないということを知るのが非常に大切です。放射線の問題、原発の問題、宇宙の問題、地震の問題を分かっていない。そのことを知っていただくために今日のお話をされるということでした。
自分のことは自分では分からない。地球も地上からではその全体像が見えない。3年前にその使命を終えてつきに衝突して尽きた月探査衛星が月に落ちる前に撮った月から昇ってくる地球の姿が捉えられている。まずはこの映像をみて、なるほどと感じていただく。
1.地球を直径1mのボールに例えると
地球の周りの空気の厚さはたった1mmです。海の深さは0.5mm位です。その下に3mm程度の薄い皮が十数枚重なっていて、そのなかの地球の中の大部分はどろどろとした成分のものが対流しているのです。このような状況で断層が少しずれただけで今回のような大地震が発生するわけです。地震は避けようがないだから、今回震災にあわなかった人たちも、その場に居合わせた可能性はあったわけで、これからもそういう場面に自分は居合わせないという保障はないわけで、震災はわれわれ全体の事として考えなければならない
2.人類の創生
人類創世記はアフリカで大地震で地面が裂け砂漠ができて、そこにサルが残された。生き残るために4つ足では不自由なので立ち上がり、その結果として頭が大きくなり進化してきました。つまり、ここでは地震によって人が育ったわけです。このように、世の中のことは、プラスのこととマイナスのことが同じ量だけあってバランスをしているのです。
3.衛星の衝突
宇宙には無数の隕石が漂っていて、その1つが地球にぶつかっても地球にはダメージが生じるが、地球にぶつかったために今の4季のある地球がある。月が地球にぶつかったことにより地軸が23.6度傾き4季ができました。その月が地球にぶつかった後、地球の周りを回っていることにより月からの引力の力をうけ、この23.6を保っているのです。災い転じて福となすではないのすが、可能性の低い偶然が重なった結果と考えるのではなく、起こるべくしえ起こったとも考えられるわけです。この偶然がなかったら、地球は地軸が垂直で高速に回転するため、空気の層が嵐のように吹き荒れて、その大きな音により、今のような静寂の世界ではないので、音楽を楽しめなかった、つまり、音楽がなかったとも言えます。
4.地球とどう向かい合っていくのか
災害は忘れられたころにやってくる(寺田寅彦)と言っています。今回の津波は想定外でしたといっている人がいますが、今まで30mを越える津波が来たことは歴史が物語っています。地震が人類を作り、地震が人間を壊してゆく。50年に一度、夜が来る(新月)。そのときに人間は何をするか考えて見なさい。
以上は自然と人類がいかに密接にかかわっているのかを知ってほしいということです。
5.原発について
原子の世界は確率で動いていて、制御できない。ほかの世の中は熱力学の第2法則で動いているが、原子はこの原理に反しているので、制御するのは難しい。原子力がよいと言っている人たちは、地球の温暖化という一点から、他のエネルギーは温暖化を加速したり、コストがかかりすぎて実用にならないとかを根拠にしていて、安全性の根拠は使ったエネルギーの廃棄に多くの年月がかかり、その保管コストや保管中にエネルギーがもれるというリスクなどを隠したまま、安全だ、コストが安い、クリーンだなどと言っているのだ。何かを隠して守ろうとする人は、何かを壊す人になる。こういう人が核の爆発ボタンを押すのである。何かを守ろうとする人は、それを攻撃する人を攻撃するのです。これが人間の本質です。母親は自分の子供をかわいがって抱いているその手で、自分たちを攻撃しようとしている人たちをその手で殺すことをします。
つまり、考え方の出発点は、自分は被害者であり、加害者であるということを認識することから始めるのがたいせつである。
ここで、想定外ということはあり得ない。過去を調べれば、同じことが何度も起きていることが分かるということを的確に詩にしているのが、金子みすゞの「しけ玉」というものです。
夕燒のなかに、しけだまが赤いよ。
しけだまの下では、仔牛(べえこ)があそぶよ。
もういつからか、あがつたきりだよ。
誰も うはさも、しなくなつたよ。
夕燒のそらに、しけだまは赤いよ。
いつか來る、いつか來る時かを知らすよ。
また、太陽エネルギーは天候に左右されるから安定的なエネルギーではないと言っている人がいるが、晴れた場所で作られた電気を曇ったところに電気を供給する。そうすれば、太陽熱発電も安定している。自然エネルギーが不安定といっている人たちには知恵がない。
また、ここでも金子みすゞの「昼の月」の詩が言い当てているそうです。
しゃぼん玉みたいなお月さま
風吹きや、消えそなお月さま。
いまごろどっかのお国では、
砂漠をわたる旅びとが、
暗い、暗いといってましょ。
白いおひるのお月さま、
なぜなぜ行ってあげないの。
これと同じ事をやったらいいじゃないですか。晴れているところで作った電気を曇っているところにもってゆく。それくらいな事は、本気で考えればできますよ。
6.自然災害って
自然災害という言い方はおかしい。星の衝突はしょっちゅう起きていて、まれに起きることではない。
普段起きていることを災害というのはおかしい。
7.マニュアルは平常時には当てはまる
しかし、マニュアルは非常時には当てはまらない。非常時になったらマニュアルにこだわらずに状況をみて判断するのが結果的に正しい判断となる。マニュアルとおりでないことがよい事があるとの認識を持てば、マニュアルにしばられない判断、行動がとれる。
8.幸せって何?
自分ひとりの幸せはあり得ない。相手があっての幸せ。慈悲の慈とは望むこと(metta)、悲とはやはり望むこと(karuma)で相手があっての幸せを表している。自分にとっての幸せを考えてみる。
聖フランチェスコはその言葉の一節に
慰められるよりも慰めることを
理解される事よりも理解することを
愛されるよりも愛することを
私が求めますように
私達は与えるから受け
許すから許され
自分を捨てて死に
永遠の命にあずかるのですから
つまり、与えることで与えられるという考えが、復興のスタートとなるのではないか。人間の知恵は大きい。希望を持つことが大事です。希望には芸術が大きな力を発揮します。
というような講演をされました。
佐治先生は毎日新聞の三重県版に記事を書かれていますが、毎日新聞のホームページにも載っていますのでぜひご覧ください。検索キーワードは「佐治博士の不思議な世界」です。

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