2011年2月27日日曜日

「女性を宇宙は最初に作った」佐治晴夫著 を読んで


全体を読む前に、この「女性を宇宙は最初に作った」というインパクトのある書名がどこから来ているのか、また、どういう根拠で言われているのかを知りたいと思っていたので、全体をざっと流し読みをして、その部分に集中して探しました。
以下が、その論点です。
旧約聖書では、女性は男性のあばら骨から作られたと言っています。
しかし、宇宙の創生から地球が誕生し、地球上に生命が誕生してからの10億年は、すべての生物は単一の性で、あらゆるものがメスだったということが分かっているそうです。その後の進化で、人間は受精から出産までの40週の最初の6週間目までは女性として成長し、7週目に入ったところで男性となるチャンスがあるそうですが、それを逃すと女性として成長して産まれてくるそうです。
このようなことから、「女性を宇宙は最初に作った」ということになるそうです。また、私もこの題名から女性礼賛の内容かと思いながら本を開きましたが、そうではなく男女が平等に補い合うという立場から書かれたと「おわりに」に書かれていました。
また、先生は色々な本を書かれていますが、この本は東京のカフェの要望で「女性のための宇宙講座」を開講して、それが予想以上に好評だったので本書ができることとなり、そのテーマにちなんで本書の題名になったそうです。
これで、書名の由来が分かったので、安心して最初から要点を読み解いてゆきたいと思います。
以上、2011年2月27日 記
今回は本を読むのではなく、この本を紐解いてみようと思います。
佐治先生の本やお話はリベラルアーツを体現されているもので、物理、科学を芸術、文学、音楽などと結び付けておられるので、趣旨を汲んで読んだほうがよいのは分かっているのですが、私の性格として分析的になってしまうので、以下の視点で冷静に見てみます。
導入の話題
展開、想起されるもの
物理学的解説
1.人はなぜ「月」を愛でるのか
月の人を感動させると美しさと月を科学的に見るという両面から月の神秘を紐解いています。
★同じ月を見ながら心を通わす
導入の話題
疎開先での、月夜に海岸線に打ち寄せる波頭のきらめきに感動
展開、想起されるもの
人は月を愛でる
芭蕉の句(月の友)
物理学的解説
月の光と屈折について解説しています
★月の神秘に迫る
導入の話題
幼少の頃に望遠鏡で初めて月を見たときの衝撃
物理学的解説
アポロ計画の成果
日本の月周回探査機<かぐや>
展開、想起されるもの
月の生い立ちから地球、人間の生い立ちを問いかける
★「月の出」と「星の出」
導入の話題
地球に一番近い天体、月
展開、想起されるもの
薬師如来、日光菩薩、月光菩薩   
万葉集と天の川
物理学的解説
月の大きさ、重さ、地球からの距離
「月の出」の時間が少しずつ変わる
「星の出」が季節により変わる
★月の呼び名と心の機微
導入の話題
月が地球を公転していることで、地球、月、太陽の位置関係
展開、想起されるもの
源氏物語、良寛の歌など日本の文学や詩歌と月のかかわり
物理学的解説
月の公転周期と地球の自転と公転
満月、月食、新月、三日月、十三夜、宵待、十五夜、立待
★月がなければ音楽はなかった
導入の話題
月は毎年3センチずつ、地球から離れている
展開、想起されるもの
月がなくて自転速度が今の3倍だとハリケーン以上の風で音楽などではない
私達は変転する宇宙の歴史の中で一番いい時期に生きているかも
物理学的解説
ニュートンの運動の第一法則
地球の四季は地球の自転軸が傾いていて月が傾きを安定させている
★天体衝突の驚異
導入の話題
望遠鏡で見る月の素顔(クレーター)は神秘的な造形美そのもの
展開、想起されるもの
クレーターの成因についての諸説の移り変わり
物理学的解説
月は地球に衝突した隕石の破片が地球の周りに飛び散ったものが固まった
地球も隕石の衝突の可能性が在り、実際その可能性がある
★明暗もたらす地球への衝突
導入の話題
ここ数年、星空での新しい発見が続いている
展開、想起されるもの
月探査機<かぐや>が撮影した感動的な「地球の出」

物理学的解説
土星の衛星エンケラドスに液体の水があるらしい
ホームズ彗星の大バースト現象
彗星や小惑星は命の故郷
宇宙の気まぐれは、宇宙や私たちを知る上での貴重な”学びの場”
★月の満ち欠けは命の連鎖
導入の話題
天体という球体が空中に浮いているのは不思議ですね
展開、想起されるもの
日本の伝説では月の様子はウサギが餅つき
中国の伝説では月の様子は不老長寿の薬を作っている情景
月にはかぐや姫などの女神がすんでいると考えられていた
フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語などで月は女性名詞
フランスの詩人、ボードレール著、「パリの憂鬱」という詩集を紹介
物理学的解説
太陽が地球の真後ろにして前方にできた地球の影に月がすっぽり入るのが皆既月食
以上、2011年3月20日 記
2.「時間」とは何か
時間とは私たちの人生そのもの
★「今日の終わり」はいつか
導入の話題
夜の11時59分59.999999秒のように0.999999のように9が限りなく続いても0時0分0秒にはならない。だから今日の終わりは存在しない。
展開、想起されるもの
ドイツの数学者、デデキントが実数の連続性を発見した
物理学的解説
夜の11時59分59.999999秒のように0.999999のように9が限りなく続けばそれが1
★すべては太陽から
導入の話題
キリスト教神学者のA・アウグスティヌスが時間とは自明だと思っても、いざ聞かれると答えられないと言っている
展開、想起されるもの
古代ギリシャ時代の哲学者、ヘラクレイトスは「万物流転」といい、平家物語でも「祇園精舎の鐘の音、…」
物理学的解説
地球の自転と、地球と太陽との位置関係は少なくとも同じ時期はいつの年でも同じ
★ほんとうに正確な「時」とは
導入の話題
月の出の時刻は大きく変化しますが、それよりも満ち欠けがありおよそ29.5日を周期とする
展開、想起されるもの
月日と季節のずれを克服するために「二十四節気」が考えられた
物理学的解説
今、最も正確だとされているのは、原子時計で原子の固有振動を使ったもの
★物理的な時間には過去と未来の区別はない?
導入の話題
時間そのものには、過去、未来などに対しての絶対的な意味はない
展開、想起されるもの
「物理的な時間には過去と未来の区別はない」ということなのでしょうか?
物理学的解説
私たちが認識できる世界とは必然的に「膨張している宇宙」だけだ。
★楽しい時間はなぜ速いのか
導入の話題
10歳の子供に対しての1年間は生涯の1/10ですが、50歳の大人に対してはそれまでの生涯の1/50にすぎない
展開、想起されるもの
男性はせっかち、で女性はおっとりしている
物理学的解説
おそらく生物学的な性差が関与しているのでしょうが、女性は自然に経過する時間に対しては寛容である
★宇宙は「5次元」の世界の時空
導入の話題
時間と宇宙は深いつながりがあって、宇宙の誕生こそが、時間の始まりだともいえます。
展開、想起されるもの
私たちが普段、体験している空間は、縦、横、高さを想定しています
物理学的解説
私たちの3次元世界に一番近いのが4次元空間で、ここに過去から未来へと流れるという時間を加えるとつじつまが合う
★「トンネル」の先にあるもの
導入の話題
私たちの人生も、トンネルをくぐっては抜け、抜けてはくぐりながら新しい駅に到達する列車に似ているような気がします
展開、想起されるもの
トンネルといえば川端康成の小説で「国境のトンネルを抜けると雪国であった」。トンネルは別世界への架け橋
物理学的解説
科学の世界でもトンネルの先はブラックホール、ホワイトホールであり、宇宙の全ての根源はトンネルの先にあるような気がする
以上、2011年4月29日 記

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2011年2月1日火曜日

二十世紀の忘れもの トワイライトの誘惑 佐治晴夫+松岡正剛 を読んで

「二十世紀の忘もの」と題したこの本は、二十世紀の最後の2年にあたる1999年1月に出版されました。この本は薄羽美江さんの企画された「匙塾」というサロンでの佐治晴夫氏と松岡正剛氏の対話を記録したものです。

佐治晴夫氏はまえがきで、「世の中の関心が巨大なものへと向かっているいま、”小さなもの” ”かすかなもの”へ関心を向けてみてはどうだろう。それは、みずからを生み出した宇宙への思いをみずからの魂の中に思い描いてみることだと言ってもよい」とかかれておりました。

また、松岡正剛氏は、あとがきで「二十世紀はデキのよいものばかりを発明し、また大胆な開発をしてきたが、それを存分に理解させることは怠ったように思う…。次の時代には再編集が迫られることになるのだろう。また、そのときは二十世紀だけを編集するのではなくて、歴史そのものの再編集が大きな課題になるだろうと思われる」とまとめられておりました。そんなお二人の思いを抱きつつ本文を読みはじめたいと思います。

これからのまとめ方としては、文章の中で私が気になったキーワード、センテンスをマップにします。ですから、この本に対する私の感想ではなく、私の感じたマップを対談、講義毎にまとめました。
この方法で、まずは目次から見てゆきます。

ここまで、2011年1月31日 記
第1章 夢の呼吸
【対談】トワイライトの誘惑

ここまで、2011年2月3日 記
第2章 青の記憶
【対談】月夜の虹

ここまで、2011年2月4日 記
第3章 時の芳香
【講義】小さきものの消息 松岡正剛
ここまで、2011年2月6日 記
     【講義】生と死の共存 佐治晴夫
ここまで、2011年2月8日 記
     【対談】「実在」と「非実在」の間に
ここまで、2011年2月10日 記
第4章 空の破片
【講義】宇宙の由来と将来 佐治晴夫
宇宙の誕生と将来についてマップは先生のお話が分かり易くまとまったと思います。
ここまで、2011年2月11日(誕生日。心身ともに丈夫に産んでくれた母に感謝) 記
     【講義】生命の由来と将来 松岡正剛
ここまで、2011年2月12日 記
     【対談】心と宇宙のミラーリング
ここまで、2011年2月19日 記
第5章 種の郷愁
【講義】生命から意識へ 松岡正剛
ここまで、2011年2月19日 記
     【講義】宇宙から意識へ 佐治晴夫
ここまで、2011年2月19日 記
     【対談】香ばしい失望
ここまで、2011年2月19日 記
第6章 月の遊技
【対談】二十世紀の忘れもの
以上、2011年2月20日 未明記 未完成のまま終了

2011年1月9日日曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第10回 「私たちはどこから来てどこに行くのか」 参加報告

Visionary Institute 2010 World Cafeの第10回は、佐治晴夫氏の「創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ」セミナーを受けて、2011年「私たちには何が必要であると考えますか?」、そして、「私たちは何をしたらよいでしょうか?」について、株式会社エムシープランニング代表の薄羽美江さんのファシリテートにより対話を行いました。今回の企画の特徴は、薄羽さんが本日の冒頭で言われました、「20世紀の忘れもの」から「21世紀の贈りもの」へと進化・深化させて、真の価創造に向かいたいという想いを実践する場を提供したところにありました。そんなところが、色々なところで行われているワールド・カフェとの違いではないでしょうか。

各グループ発表のまとめ
私と私がいるから私たちになる。そのつなぐものということで各チームから発表がありました。


各グループのまとめを図式化してみました


・Aチーム発表
私と私が集まって私たちになるので、私と私をつなぐのは感じる心を育む、お互いを認め合うということです。
違いが有ることを認める関係性ができればよい。


Aチームのテーブルクロスを図式化してみました


・Bチーム発表
安心で居心地の良い囲みでないと未来は無い。
囲みの最小限のものは自分であるが、ただし、今、安心できる囲みとは家族であろう。
自分と家族と言う囲みを離れたくないと思うのではなく、自分が外に出て行くことで安心、安全をより世界に広げてゆくのが大事ではないか。
一言で言うと、皆で「宇宙家族ロビンソン」になろう!


Bチームのテーブルクロスを図式化してみました


・Cチーム発表
個人の枠を外す。枠を外すように意識を変える。
そこで大事なのが、こころは前向きで行動する。
最終的に一番つなげてゆきたいのは、皆さんがそれぞれのコミュニティでWorldCafeをやってゆこう。
それが地球規模で行われてゆけば良い社会が出来てゆくのではないでしょうか。

チェックイン
今回は5人のチームです。そのうち2人の方は始めて参加されたそうです。私も第一回目は、他のライブラリートークのようにセミナーを聞くのだろうなと思っていて部屋に入ったら4人程度のテーブルに分かれていて、これから何が始まるのだろうと思っていましたが、このお二人もきっとそうだろうなと思い、リラックスしてもらうようにお話を始めました。グループのホストは、前回の発表で「元気が出る発表だった」と、皆さんに好感を与えた片山さんが今回も選ばれました。

第一ラウンド
-先ずは私から口火を切りました。今年は、自分の固定観念を外して、あえて不得意だと思っていることに挑戦しようかと思っていることをお話しました。つまり2011年に私たちというより私には佐治晴夫先生がセミナーで繰り返し強調されていた、リベラルアーツが必要ではないか。つまり、既存の伝統や風習から大きく心を開放して新しい思想のパラダイムを目指すには、音楽や天文、芸術に積極的に触れてゆこうと思っています。
-「脱力して」、色々なことをやりたい。昨年は余計なものを捨てた気づく1年だった。
-「跳躍」。ジャンプアップ。生かしたい。
-「自分で1から考え直す」。座禅で、会社に頼らず、自分で何かを始める。
-「ちゅうちょしない」考えすぎずに、先ず行動して結果を見極める。
つまり、Cグループは今年はそれぞれが前向きに行動する決意表明でした。

第二ラウンド
ホストの片山さんを残して、残りの4人は別のテーブルへ。私も別のテーブルでこのチームで行われた対話である、それぞれが今までの枠にとらわれず前向きに行動してみるという話をしてきましたが、これは他のグループの対話の中でインパクトのあった、脱藩と言う、つまり、枠をはみ出るという話にも通じました。また、他のグループの方のお話では、今の日本は安定していてハングリー精神に欠けているのではないか。つまり、前向きな向上心が必要ではないかという対話もこれに通じるのではと感じました。

第三ラウンド
さて、4人が戻ってきました。それぞれのグループで聞いてきた対話の内容を披露されました。脱藩、ハングリー精神、幸せを感じるための環境、食育、モノ選び等など。今回のテーマの主人公は「私たち」ですが、それぞれのグループでの対話は、組織として全体でどうしようと言うより、「私」という一人一人の力の結集が世の中を動かしてゆくという意気込みが強く感じられました。


Cチームのテーブルクロスを図式化してみました


・Dチーム発表
暗すぎる世の中に明るさが必要。
幸せを感じられる社会にしてゆきたい。そのためには感謝が必要ではないか。
自分の健康、家族、友人、そして先祖に感謝する。
そういった心のゆとりが大事ではないか。
それを将来にも残してゆきましょう。


Dチームのテーブルクロスを図式化してみました


・Eチーム発表
1つの結論にはなっていませんが、幾つか提言がありました。
今日の日本経済新聞の経済教室に東大の源田雄二先生の書かれていた記事の内容から話が展開してゆきました。
・アニマルスピリッツ、つまり、ハングリー精神が今の日本の社会で欠けているのではないか。
日本が豊かになり過ぎた弊害ではないか。
・竜馬伝の影響ではないですが、脱藩、つまり、自分の枠を乗り越える必要が有るのではないか。
新しい事にチャレンジしてゆくことが必要ではない。
・コアになるアイデンティティがなければ、より豊かに変わることが出来ないのではないか。
・著名な言語社会学者である鈴木孝夫氏の「日本語教のすすめ」を読むべきではないか、という結論になりました。日本人が英語でコミュニケーションすると言うことは、日本人としての特性を失う事ではない、と言うことを忘れてはいけない。


Eチームのテーブルクロスを図式化してみました


・Fチーム発表
自分自身の個性を見つけてゆこうという事を2011年の目標としよう。
自分とは違うものに遭遇したり、チャレンジしたとき、個性とは初めて分るものではないか。
日本人の特性として協調性や、思いやりの気持ちがあるというものを認識するなかで
自分の個性を見つけてゆく必要がある。
自己主張をすることを認めてゆく社会作りが必要ではないか。


Fチームのテーブルクロスを図式化してみました


・今日のまとめ
今日のまとめとして、薄羽さんは参加メンバーの寺沢さんの対話がふさわしいということで、寺沢さんにそのお話をして頂きました。寺沢さんの専門である物理学は世の中の一番小さいものと一番大きいものを扱う学問ですが、137億年の歴史のある宇宙を理解するには一番小さい原子や原子核を理解することから始まります。つまり、一番小さいものと一番大きいものがつながっている。そういう意味で前回の佐治先生のゼロのお話が、ゼロの中にミクロからマクロがつながっているというお話ととらえるとゼロの概念のお話をされた趣旨が分かりましたということでした。ゼロは丸の形をしているので、とても象徴的な気づきで結びに相応しいと薄羽さんは感じたそうです。

・推薦書籍のご紹介




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2010年12月30日木曜日

Visionary Institute - 2010 Seminar 第9回 佐治晴夫氏「創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ」 参加報告

Visionary Institute - 2010 Seminar 第9回 佐治晴夫氏「創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ」を受講してまいりました。今年4月から始まったこのセミナーも、いよいよ最終回です。今回はクリスマスセミナー。株式会社エムシープランニング代表の薄羽美江さんによるとクリスマスセミナーとはイギリスで行われた年末に本物の科学者から科学の話を聞くというもので、今回はそれにふさわしい佐治晴夫氏をお招きしてのセミナーでした。
全体の感想としては、先生は学生さんに科学を分かりやすく説明するための引き出しをいっぱい持っていて、幾らでも話が尽きない方だと感じました。

・宇宙と音楽
まずは先生を知るためにアメリカの天文学者、SF作家であるカール・セーガン博士の本を映画化した「コンタクト」の映像から始まりました。佐治教授とセーガン博士は1977年、ともにNASAのボイジャー計画に携わりました。この本でカール・セーガン博士から宇宙とのコンタクト方法を相談されて、数学と音楽を一緒にしてコミュニケーションに利用することを提案し、それが映画に採用されました。

・失敗は何度でもしたほうが良い
最初のエピソードは糸川先生とのお話でした。佐治先生は初めの頃は東大の物性研究所に勤めていて、その向かい側に糸川先生の勤めている東京大学生産技術研究所がありました。そこで佐治先生は糸川先生に会う機会があり、そのような時に糸川先生の言われたことで印象に残っていることがあり、それを紹介されました。「人間は1回失敗しただけではダメだよ。何度でも失敗してもいいんだよ」、つまり「ご飯を炊くときに米の量を計るのを間違えて、水の量を計るのを間違えたときに、おいしいご飯が炊けることが有るではないか」、「だから一回失敗したからとしょげていてはダメで、大いに失敗しなさい」とおっしゃられたそうで、それが糸川イズムでした。その糸川イズムから「はやぶさ」が生まれましたが、その話は前回の的川先生がされました。

・クリスマス講義
この講義はクリスマス講義と位置づけてお話をされました。そもそもクリスマス講義は1825年にイギリスの王立教会でマイケル・ファラデーが青少年のために最先端の科学を理解してもらうための科学実験講座で、途中戦争で中断しましたが、今では約183回になるのではないのでしょうか。佐治先生もこの講義を聴かれて、ご自分も日本でクリスマス講義を始められそうです。それから数えて今日のこの講義は126回目あたりということでした。

・「はじまり」とは何か?
先生は元々数学の出身で物理に移り、理論天文学の仕事につながってゆきました。東大に勤めていた頃には予算が少なかったため、日中は松下幸之助さんから声のかかった松下電器の研究所で働き、夜5時15分以降は東大で働くと言う生活をしていたそうです。その頃に考え始めたのが物事の根源的なこと、つまり、始まりでした。本当の始まりとは原因もなく始まらなければならないというところから宇宙の始まりに関心を持ってきました。

・ゆらぎの実用化
松下電器ではその宇宙の始まりにかかわる根源的な「ゆらぎ」の研究をしていて、研究の成果として6時間VTR磁気ヘッド、宇宙の創生の理屈をそのまま使っているヘッドフォン、ゆらぎの扇風機、ゆらぎの風呂などを商品化してゆきました。

リベラルアーツとは?
これまで仕事をしてきた中で必要と考えてきたのがリベラルアーツで、普通は教養と訳されますが、中世ヨーロッパでは、職業教育とは別に人格形成を目的とした教養基礎科目のことを言います。その中には数学、音楽、天文が含まれております。リベラルアーツとは既存の伝統や風習から大きく心を開放して新しい思想のパラダイムを目指すことです。

以下、私の感想。
私はというと高校、大学では数学、英語と技術は得意でしたが、美術、音楽は全く不得手でした。そうか!だから中途半端なエンジニアになったのかと佐治先生のお話を聞いて合点がゆきました。問題解決や新しいものを創り出すには感性が重要ですが、私にはリベラルアーツが欠けていますね。そんな負い目があるので、出張の時には時間を見つけては美術館や博物館に足を運びます。ボストン美術館、ルーブル美術館、大英博物館、ゴッホ美術館、スペインの小さな美術館、イタリアの美術館などなど。

まどみちおさんの詩(地球の用事)
まどみちおさんは玉川大学の真昼の天文台に行かれて6時間も観測室におられて「ああこれがひかりですね」と言われたそうです。そのまどみちおさんの詩に地球の用事というのがあります。
ビーズつなぎの 手からおちた 赤いビーズ 指先から ひざへ ひざから ざぶとんへ
ざぶとんから たたみへ ひくいほうへ ひくいほうへと かけていって
たたみのすみの こげあなに はいってとまった
いわれた とおりの 道を ちゃんと かけて いわれた とおりの ところへ ちゃんと 来ました
と いうように 今 あんしんした顔で 光っている ああ こんなに 小さな ちびちゃんを
ここまで 走らせた 地球の 用事は なんだったのだろう

これがリベラルアーツです。

・谷川 俊太郎さんとの対談
言葉はあいまいなものです。しかし、谷川俊太郎さんとの対談で、それほどあいまいでも無いなということが分かりました。佐治先生が「宇宙って膨張しているんです」と言うと谷川さんは「そうですか。宇宙は膨らんでいるんですか。だから皆不安なのですね」と言われました。佐治先生が「地球と月は引き合っているんです」というと谷川さんは「万有引力というのは孤独な力なんですね」と言われました。佐治先生が「宇宙はひずんでいる」というと谷川さんは「そうですか、宇宙は歪んでいるんですか。だから人々は求め合うのですね」と言われました。このように、言葉はあいまいであるがゆえに、文学や詩があるわけで、どちらが良いとも悪いとも言えないものです。数学を解くにはすべて理詰めだけではなく、感性が無いと解けません。世の中の真実は何かを追究してゆくシステムがリベラルアーツです

・能における幽玄とゼロの美しさ
能の世界は1つの能面の中に2つの反対の世界が入っている(顔の左と右)ので、数学のゼロと似ています。数学のy=1/xという分数関数のグラフを書くとxがプラスの方からゼロに近づくとyは大きくなり無限大になる、マイナスの方からゼロに近づくとマイナスの無限大になります。

・なぜまばたきするのか?
なぜまばたきするのかをつめてゆくと、結論は、「人間の祖先は魚だった」なのですが、そこに至るまでの過程を説明されていました。小学生に自ら分からせるために「さあ立って。今から1分間まばたきしちゃダメだよ。まばたきした子は座るんだよ」と言って、まばたきしないことがどれほど大変か、そしてそれはどうしてかを考えさせることでこの結論に持ってゆくわけです。このように深いからくりを感覚的に捉えてゆくのもリベラルアーツ、難しいことを易しく伝えるのもリベラルアーツです。

・なぜバッハか
1977年9月5日NASAの太陽系外惑星探査機ボイジャー1号と2号にバッハのプレリュードとフーガを積もうと言ったのが佐治教授でした。なぜバッハか?それはバッハの音楽がいかに数学的に出来ているかということからです。そういうこともリベラルアーツの延長線上にあるわけです

・月周回衛星「かぐや(SELENE)」が撮影した月越しに見えた地球

この映像は、月周回衛星「かぐや」がその役目を終えて、地球からの指示で月に激突して死ぬ時に、母である地球をとらえた映像で、その1時間40分後に月に激突しました。時は2009年6月11日。空気の無い月面から空気と水の星、地球が見えてくる。「この時のあの青い玉の上に私たちは確実にいたわけです。そういう思いであの水玉を見れるかどうか。それでかなり人生が変わると思いますね。」と佐治先生は言われました。

・自分の顔は自分では見れない!?
鏡で見ている顔は左右反対になっているので、本当の自分の顔は見ることができません。つまり、地球のことを一番知っていると自分では思っていても、実は何も分かっていないということです。

・皆さんへの質問
皆さんの中で「あしたも同じ自分でいられるか心配しながらご就寝された方はおられますか?」
皆さんの体は60兆の細胞で出来ています。その中のDNAのうちの1%は寝てからおきるまでの半日で置き換わっています。細胞は死んでいるからですね。つまり、ものとしての今日の自分は昨日の自分ではありません。つまり、自分を自分にしているのは自分と周りとの関係性で成り立っていると考えるのが一番妥当だと言われました。

以下、私の感想。
ということは、約1ヵ月半で自分が物質としては100%別人になるという事ですね。こころは、過去の自分の行動をパターン化して覚えていて、今日も昨日と同じ行動をした方が安心、安全だと考えるからなのか、又はそのパターンを固定観念として自分はこういう人間だと思いこんでしまっているのか、なかなか変われないのかもしれません。結果を恐れずに、今までとちょっと違う行動をするとうまくゆく事があります。それを続けると、気付いた時にはこころも別人になるのでしょうね。また、自分と言うのは他人との関係性で成り立つということが重要ですから、素晴らしい人に巡り合うのも重要ですね。でも、待ってていてもそういう機会はなかなか訪れないので、自分から機会を作る事でしょうね。今日の佐治先生のお話を聞けたというのも私にとっては大切な財産です。

・月が有っても無くても私たちの生活は変わらないか?
大昔に地球に小惑星が衝突して地球の軸が傾いて、四季ができました。衝突の衝撃で飛び散った岩石が固まったものが月です。月の引力があって地球の自転にブレーキをかけています。この力がないと地球の自転は1日8時間になってしまいます。

・この音は何の音?
カエルの鳴き声のような音ですが、宇宙からやってくる電波を音にしたもので、太陽から吹いてくる太陽風を音にしたものです。風とは目に見えない空気の小さい分子が動くだけではありません。太陽から目に見えない粒粒がたくさんくるのだったら風と言っていいのではないでしょうか?今の学校教育では、風は空気の移動と決め付けてしまう子供を作ってしまうが、これではいけないのではないかと佐治先生は憂いておられます。

・宇宙飛行士が月に行ったら自分の体重は軽くなったと感じるでしょうか?重くなったと感じるのでしょうか?
文部科学省の正解は月は重力が地球の1/6だから、軽くなったと感じるというものです。しかし、小学生の子供の中には宇宙にいるときには無重力状態で、月に着いたら重力があるので、重くなったと感じると言いました。このような考え方が大事です。向井千秋さんが宇宙から帰ってきたときに言ったのは「ティッシュペーパーがこんなに重いとは思わなかったなかった」ということで、それを聞いていた子供たちはこのように答えるのではないでしょうか。

・もし月が無かったらどうなったでしょうか?
もし、月がなかったら地球の自転の速さが3倍になります。そうすると地球上の風速は時速300Kmです。そうするとものすごい音がして音楽を聞くどころではない。だから、もし月が無かったら音楽はなかったですね。このように科学的な裏づけを持ちながら自由な発想をするような教育が大事ですね。

・ジェット機が飛ぶ理屈と水洗トイレの理屈は同じだよね!
この話をしたら東京大学に数十人入るという高校生はキョトンとしていた。こういう人が東大に入って政治家になったらこの国はどうなっちゃうのかな?ジェット機が飛ぶのは翼の上側と下側では風のスピードが違うからです。上側では長い距離を流れるので、スピードが速くなって圧力が小さくなり浮力が出てくるわけです。水洗トイレは下に下水が静かに流れていて圧力が下がってているので水洗トイレは流れてゆきます。ベルヌーイの法則を簡単に説明するとこのようになります。

・人間の奇妙さを実にうまい具合に言っているのが宮沢賢治です
「春と修羅」の第一集の序で、「わたくしという現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です。あらゆる透明な幽霊の複合体、風景やみんなといっしょにせわしくせわしく明滅しながら いかにもたしかに ともりつづける因果交流電燈のひとつの青い照明です」という文章を紹介されました。これはリベラルアーツをやっていないと分かりませんね。われわれは1つの人格と思ったらおお間違いです。Aさんと会っているときの人格とB君と会っているときの人格、歩いているときの人格と車に乗っているときの人格は微妙に違っています。ですから人は色々な人格の集まりであります。また、私たちの命には限りがありますが、しかしそのときに灯された光は消えないでしょう。

・ことりさんと一本の木の話(新美南吉の小説)
ことりと一本の木は仲良しでした。そしてことりは冬が来るので南の国に帰りました。次の年に戻ってきた時にはその木は切られていて株が残っていました。木は切られてマッチの軸になりました。ことりはマッチを探して一軒の家に行きました。その家の子がつけたマッチの軸で燃やしたランプの火は残っています。つまり、次から次へと受け渡されたものは永遠につづくだろう。その中のリレーに過ぎないということを金子みすゞさんをバチカンでパウロ二世に説明した後にしたそうです。この詩を読んでやはりそこまで思い浮かばないような国語の授業は国語の授業ではないと言われました

・リベラルアーツというものの考えかた
子供のための物語であろうが、大人のための物語であろうが、数学、哲学であろうがそれぞれのこころというものには一貫した共通項があり、それを感じて、自分のものにしてゆくのがリベラルアーツの方法だと思います。言葉を音に変えるとあいまいな物が明確になってゆきます。しかも、それぞれの言語を超えた普遍的言語になります。

・言いたかったこと
「人間って本当に不思議ですよね」。ということを言いたかったのです。つぎにでてくるのは、「人間っていったい何なのか」。これは生き物の進化の途中から見ることができます。

・人間とは
京都大学の霊長類研究所の先生が言うには、人間とは相手の気持ちの分かるチンパンジーです。チンパンジーは相手の気持ちは分かりません。次にこころとは何かについてお話します。

・この音は何の音?
太陽から吹いてくる風の音だと仮定すると、太陽が爆発したときのフレアの電波の音です。電波の原因は、実験的な事実としてこの音を分析して分かることは、今から137億年前に確かに1粒の光から宇宙が生まれてきたことを表している事です。しかも、それは原因のない始まりだったことが分かるそうです。これから太陽は冬眠の状況になりますから、地球が氷河期になることが想定されています。

・核酸と言う物質
地球では水素、酸素、星で作られた炭素、窒素、鉄などが出来上がってゆきます。これから核酸が出来てきます。この核酸が神経のネットワークの中で分子集団に変化が起きると記憶になります。記憶ができるということは、現在と過去を分けることができます。それはつまり、現在と未来を分けることが出来ます。そうすると時間と言う概念が出来上がってきます。その時間と言う概念のおおもとになるのが、こころというものです。そして、自分の未来はどうなるのだろうか?と考えるわけです。

・こころはどうして出来てきたか?
人間が立ちあがるようになったから大きい脳を持つようになり、こころを持つことが出来るようになりました。しかし、立ち上がることによって骨盤が狭くなったので、子供を必要な時間だけおなかに入れておくことができずに早く産まなければならなくなりませんでした(人間は未熟児で産まれてきている)。だから人間は学校で教育を受けなければなりません。人間だけ産まれて来たときには自分ひとりでは生きられない状態です。人間は一人では生きられない。だから集団を作るようになるわけです。その集団を侵略するものがあればその集団を維持するために自分の命と引き換えに戦争をします。だから、人間の世界から戦争はなくなりません。戦争はやめようとして止められるものではありません。では、どうしたら止められるのか。それは人類の進化の途中で何ゆえにあなたは戦うのか、そういうことを科学の立場から理解することによって、そこを出発点としてどうしたら良いのかということが出てくるでしょう。それがリベラルアーツです

以下、私の感想。
大陸では隣り合う国同士が資源や地の利などから領土を広げようと戦争をしてきました。戦争から自国を守ると言う大義で権力者が戦争を利用したり、政治を利用したり、宗教を利用してきました。宗教には他の宗教を受け入れるということはあまりありません。博愛の宗教、助け合う宗教、好戦的な宗教など色々あります。このような宗教の創始者や権力者が、もし、スペースシャトルに乗って宇宙から地球を見ることが出来ていたならば、自説にこだわらず、広い心で思想が形成されたのではないかと想像いたしました。この講義の後で薄羽さんが中心となって30人程の人たちで先生を囲む懇親会を行いましたが、参加者の1人の京さんが、10年ほど前に考えたこととして、サミットを宇宙で開いたら有意義なものになるだろうということを披露して頂きましたが、私も同感です。

・人間らしさとは
人間とは分かち合うことが出来るものです。その辺りの事を絶妙に言っているのが宗教です。特にキリスト教などはまさにそのとおりです。「理解されるより、理解することを求めさせてください。愛されるより、愛することを求めさせてください。それは与えることによって、与えられるからです。許すことによって、許されるからです」。人間は環境に適用するために耐えることが出来ます。ところが、環境の変わり方が早すぎるために適応できないので、耐えることが出来なくなっているだけの話です。そこに気がつく必要があります。

・事業をするためのマネージメント
佐治先生は松下にいたときに1兆円を売り上げました。そのうち、扇風機で500億円売り上げました。そのときのマネージメントですが、ビジョンをいかに持つか。次にビジョンを理念に変える。理念に変えたら組織がどうあらねばということが決まる。組織が決まればタイムスケジュールが決まってきます

以上が、本日の佐治晴夫先生のお話で、持ち時間の20:30を過ぎて21:00過ぎまでお話して頂きました。その後、場所を51階の六本木ヒルズクラブに移動して、30人ほどで先生を囲む懇親会があり、参加させて頂きましたが、先生のお話は尽きませんでした。先生は夜通し話しても良いとおっしゃって頂き、予定の23:00を過ぎても楽しいひと時があっという間のようでした。

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2010年12月23日木曜日

Visionary Institute 2010 Seminar 第9回 佐治晴夫氏「創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ」 参加報告


Visionary Institute 2010 Seminar第9回 「創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ」を受講してまいりました。今年4月から始まったこのセミナーも、いよいよ最終回です。今回はクリスマスセミナー。株式会社エムシープランニング代表の薄羽美江さんによるとクリスマスセミナーとはイギリスで行われた年末に本物の科学者から科学の話を聞くというもので、今回はそれにふさわしい佐治晴夫氏をお招きしてのセミナーでした。
全体の感想としては、先生は学生さんに科学を分かりやすく説明するための引き出しをいっぱい持っていて、幾らでも話が尽きない方だと感じました。
・宇宙と音楽
まずは先生を知るためにアメリカの天文学者、SF作家であるカール・セーガン博士の本を映画化した「コンタクト」の映像から始まりました。佐治教授とセーガン博士は1977年、ともにNASAのボイジャー計画に携わりました。この本でカール・セーガン博士から宇宙とのコンタクト方法を相談されて、数学と音楽を一緒にしてコミュニケーションに利用することを提案し、それが映画に採用されました。
・失敗は何度でもしたほうが良い
最初のエピソードは糸川先生とのお話でした。佐治先生は初めの頃は東大の物性研究所に勤めていて、その向かい側に糸川先生の勤めている東京大学生産技術研究所がありました。そこで佐治先生は糸川先生に会う機会があり、そのような時に糸川先生の言われたことで印象に残っていることがあり、それを紹介されました。「人間は1回失敗しただけではダメだよ。何度でも失敗してもいいんだよ」、つまり「ご飯を炊くときに米の量を計るのを間違えて、水の量を計るのを間違えたときに、おいしいご飯が炊けることが有るではないか」、「だから一回失敗したからとしょげていてはダメで、大いに失敗しなさい」とおっしゃられたそうで、それが糸川イズムでした。その糸川イズムから「はやぶさ」が生まれましたが、その話は前回の的川先生がされました。
・クリスマス講義
この講義はクリスマス講義と位置づけてお話をされました。そもそもクリスマス講義は1825年にイギリスの王立教会でマイケル・ファラデーが青少年のために最先端の科学を理解してもらうための科学実験講座で、途中戦争で中断しましたが、今では約183回になるのではないのでしょうか。佐治先生もこの講義を聴かれて、ご自分も日本でクリスマス講義を始められそうです。それから数えて今日のこの講義は126回目あたりということでした。
・「はじまり」とは何か?
先生は元々数学の出身で物理に移り、理論天文学の仕事につながってゆきました。東大に勤めていた頃には予算が少なかったため、日中は松下幸之助さんから声のかかった松下電器の研究所で働き、夜5時15分以降は東大で働くと言う生活をしていたそうです。その頃に考え始めたのが物事の根源的なこと、つまり、始まりでした。本当の始まりとは原因もなく始まらなければならないというところから宇宙の始まりに関心を持ってきました。
・ゆらぎの実用化
松下電器ではその宇宙の始まりにかかわる根源的な「ゆらぎ」の研究をしていて、研究の成果として6時間VTR磁気ヘッド、宇宙の創生の理屈をそのまま使っているヘッドフォン、ゆらぎの扇風機、ゆらぎの風呂などを商品化してゆきました。
リベラルアーツとは?
これまで仕事をしてきた中で必要と考えてきたのがリベラルアーツで、普通は教養と訳されますが、中世ヨーロッパでは、職業教育とは別に人格形成を目的とした教養基礎科目のことを言います。その中には数学、音楽、天文学が含まれております。リベラルアーツとは既存の伝統や風習から大きく心を開放して新しい思想のパラダイムを目指すことです。
以下、私の感想。
私はというと高校、大学では数学、英語と技術は得意でしたが、美術、音楽は全く不得手でした。そうか!だから中途半端なエンジニアになったのかと佐治先生のお話を聞いて合点がゆきました。問題解決や新しいものを創り出すには感性が重要ですが、私にはリベラルアーツが欠けていますね。そんな負い目があるので、出張の時には時間を見つけては美術館や博物館に足を運びます。ボストン美術館、ルーブル美術館、大英博物館、ゴッホ美術館、スペインの小さな美術館、イタリアの美術館などなど。
まどみちおさんの詩(地球の用事)
まどみちおさんは玉川大学の真昼の天文台に行かれて6時間も観測室におられて「ああ、これがひかりですね」と言われたそうです。そのまどみちおさんの詩に地球の用事というのがあります。
ビーズつなぎの 手からおちた 赤いビーズ 指先から ひざへ ひざから ざぶとんへ
ざぶとんから たたみへ ひくいほうへ ひくいほうへと かけていって
たたみのすみの こげあなに はいってとまった
いわれた とおりの 道を ちゃんと かけて いわれた とおりの ところへ ちゃんと 来ました
と いうように 今 あんしんした顔で 光っている ああ こんなに 小さな ちびちゃんを
ここまで 走らせた 地球の 用事は なんだったのだろう
これがリベラルアーツです。
以下、私の感想。
佐治先生の発案で玉川大学の屋上に「昼間の星」を見ると言う天文台を作られました。そのこころは、見えないと思い込んでいる真昼の星を見るという非日常体験をすることにより、思い込みと言うものを考えさせることにあるということでした。私はこのVisionary Instituteに参加して薄羽さんより、この天文台のスタッフをされている潮木さんを紹介されました。この天文台は毎週木曜日に公開されているので、私は2010年7月1日に潮木さんを尋ねて行きこの体験をさせていただきました。話は変わりますが、2011年1月1日のNHKのテレビで山で淡水(好適環境水)でマグロを育てている岡山理科大学の放送を見ました。ここでも、「魚は海水で生きる」というのと、「マグロは海で育つ」というのが思い込みだということを思い知らされました。
・谷川 俊太郎さんとの対談
言葉はあいまいなものです。しかし、谷川俊太郎さんとの対談で、それほどあいまいでも無いなということが分かりました。佐治先生が「宇宙って膨張しているんです」と言うと谷川さんは「そうですか。宇宙は膨らんでいるんですか。だから皆不安なのですね」と言われました。佐治先生が「地球と月は引き合っているんです」というと谷川さんは「万有引力というのは孤独な力なんですね」と言われました。佐治先生が「宇宙はひずんでいる」というと谷川さんは「そうですか、宇宙は歪んでいるんですか。だから人々は求め合うのですね」と言われました。このように、言葉はあいまいであるがゆえに、文学や詩があるわけで、どちらが良いとも悪いとも言えないものです。数学を解くにはすべて理詰めだけではなく、感性が無いと解けません。世の中の真実とは何かを追究してゆくシステムがリベラルアーツです
・能における幽玄とゼロの美しさ
能の世界は1つの能面の中に2つの反対の世界(顔の左と右)が入っているので、数学のゼロと似ています。数学のy=1/xという分数関数のグラフを書くとxがプラスの方からゼロに近づくとyは大きくなり無限大になる、マイナスの方からゼロに近づくとマイナスの無限大になります。
・なぜまばたきするのか?
なぜまばたきするのかをつめてゆくと、結論は、「人間の祖先は魚だった」なのですが、そこに至るまでの過程を説明されていました。小学生に自ら分からせるために「さあ立って。今から1分間まばたきしちゃダメだよ。まばたきした子は座るんだよ」と言って、まばたきしないことがどれほど大変か、そしてそれはどうしてかを考えさせることでこの結論に持ってゆくわけです。このように深いからくりを感覚的に捉えてゆくのもリベラルアーツ、難しいことを易しく伝えるのもリベラルアーツです。
・なぜバッハか
1977年9月5日NASAの太陽系外惑星探査機ボイジャー1号と2号にバッハのプレリュードとフーガを積もうと言ったのが佐治教授でした。なぜバッハか?それはバッハの音楽がいかに数学的に出来ているかということからです。そういうこともリベラルアーツの延長線上にあるわけです
・月周回衛星「かぐや(SELENE)」が撮影した月越しに見えた地球
この映像は、月周回衛星「かぐや」がその役目を終えて、地球からの指示で月に激突して死ぬ時に、母である地球をとらえた映像で、その1時間40分後に月に激突しました。時は2009年6月11日。空気の無い月面から空気と水の星、地球が見えてくる。「この時のあの青い玉の上に私たちは確実にいたわけです。そういう思いであの水玉を見れるかどうか。それでかなり人生が変わると思いますね。」と佐治先生は言われました。
・自分の顔は自分では見れない!?
鏡で見ている顔は左右反対になっているので、本当の自分の顔は見ることができません。つまり、地球のことを一番知っていると自分では思っていても、実は何も分かっていないということです。
・皆さんへの質問
皆さんの中で「あしたも同じ自分でいられるか心配しながらご就寝された方はおられますか?」
皆さんの体は60兆の細胞で出来ています。その中のDNAのうちの1%は寝てからおきるまでの半日で置き換わっています。細胞は死んでいくからですね。つまり、ものとしての今日の自分は昨日の自分ではありません。つまり、自分を自分にしているのは自分と周りとの関係性で成り立っていると考えるのが一番妥当だと言われました。
以下、私の感想。
ということは、約1ヵ月半で自分が物質としては100%別人になるという事ですね。こころは、過去の自分の行動をパターン化して記憶していて、今日も昨日と同じ行動をした方が安心、安全だと考えるからなのか、又はそのパターンを固定観念として自分はこういう人間だと思いこんでしまっているのか、なかなか変われないのかもしれません。結果を恐れずに、今までとちょっと違う行動をするとうまくゆく事があります。それを続けると、気付いた時にはこころも別人になるのでしょうね。また、自分と言うのは他人との関係性で成り立つということが重要ですから、素晴らしい人に巡り合うのも重要ですね。でも、待ってていてもそういう機会はなかなか訪れないので、自分から機会を作る事でしょうね。今日の佐治先生のお話を聞けたというのも私にとっては大切な財産です。
・月が有っても無くても私たちの生活は変わらないか?
大昔に地球に小惑星が衝突して地球の軸が傾いて、四季ができました。衝突の衝撃で飛び散った岩石が固まったものが月です。月の引力があって地球の自転にブレーキをかけています。この力がないと地球の自転は1日8時間になってしまいます。
・この音は何の音?
カエルの鳴き声のような音ですが、宇宙からやってくる電波を音にしたもので、太陽から吹いてくる太陽風を音にしたものです。風とは目に見えない空気の小さい分子が動くだけではありません。太陽から目に見えない粒粒がたくさんくるのだったら風と言っていいのではないでしょうか?今の学校教育では、風は空気の移動と決め付けてしまう子供を作ってしまうが、これではいけないのではないかと佐治先生は憂いておられます。
・宇宙飛行士が月に行ったら自分の体重は軽くなったと感じるでしょうか?重くなったと感じるのでしょうか?
文部科学省の正解は月は重力が地球の1/6だから、軽くなったと感じるというものです。しかし、小学生の子供の中には宇宙にいるときには無重力状態で、月に着いたら重力があるので、重くなったと感じると言いました。このような考え方が大事です。向井千秋さんが宇宙から帰ってきたときに言ったのは「ティッシュペーパーがね、こんなに重いとは思わなかったなかったわ」ということで、それを聞いていた子供たちはこのように答えるのではないでしょうか。
・もし月が無かったらどうなったでしょうか?
もし、月がなかったら地球の自転の速さが3倍になります。そうすると地球上の風速は時速300Kmです。そうするとものすごい音がして音楽を聞くどころではない。だから、もし月が無かったら音楽はなかったですね。このように科学的な裏づけを持ちながら自由な発想をするような教育が大事ですね。
・ジェット機が飛ぶ理屈と水洗トイレの理屈は同じだよね!
この話をしたら東京大学に数十人入るという高校の生徒さんはキョトンとしていた。こういう人が東大に入って政治家になったらこの国はどうなっちゃうのかな?ジェット機が飛ぶのは翼の上側と下側では風のスピードが違うからです。上側では長い距離を流れるので、スピードが速くなって圧力が小さくなり浮力が出てくるわけです。水洗トイレは下に下水が静かに流れていて圧力が下がってているので水洗トイレは流れてゆきます。ベルヌーイの法則を簡単に説明するとこのようになります。
・人間の奇妙さを実にうまい具合に言っているのが宮沢賢治です
「春と修羅」の第一集の序で、「わたくしという現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です。あらゆる透明な幽霊の複合体、風景やみんなといっしょにせわしくせわしく明滅しながら いかにもたしかに ともりつづける因果交流電燈のひとつの青い照明です」という文章を紹介されました。これはリベラルアーツをやっていないと分かりませんね。われわれは1つの人格と思ったらおお間違いです。Aさんと会っているときの人格とB君と会っているときの人格、歩いているときの人格と車に乗っているときの人格は微妙に違っています。ですから人は色々な人格の集まりであります。また、私たちの命には限りがありますが、しかしそのときに灯された光は消えないでしょう。
・ことりさんと一本の木の話(新美南吉の小説)
ことりと一本の木は仲良しでした。そしてことりは冬が来るので南の国に帰りました。次の年に戻ってきた時にはその木は切られていて株だけが残っていました。木は切られてマッチの軸になっていました。ことりはマッチを探して一軒の家に行きました。その家の子がつけたマッチの軸で燃やしたランプの火は残っています。つまり、次から次へと受け渡されたものは永遠につづくだろう。その中のリレーに過ぎないということを金子みすゞさんをバチカンでパウロ二世に説明した後にしたそうです。この詩を読んでやはりそこまで思い浮かばないような国語の授業は国語の授業ではないと言われました
・リベラルアーツというものの考えかた
子供のための物語であろうが、大人のための物語であろうが、数学、哲学であろうがそれぞれのこころというものには一貫した共通項があり、それを感じて、自分のものにしてゆくのがリベラルアーツの方法だと思います。言葉を音に変えるとあいまいな物が明確になってゆきます。しかも、それぞれの言語を超えた普遍的言語になります。
・言いたかったこと
「人間って本当に不思議ですよね」。ということを言いたかったのです。つぎにでてくるのは、「人間っていったい何なのか」。これは生き物の進化の途中から見ることができます。
・人間とは
京都大学の霊長類研究所の先生が言うには、人間とは相手の気持ちの分かるチンパンジーです。チンパンジーは相手の気持ちは分かりません。次にこころとは何かについてお話します。

・この音は何の音?
太陽から吹いてくる風の音だと仮定すると、太陽が爆発したときのフレアの電波の音です。電波の原因は、実験的な事実としてこの音を分析して分かることは、今から137億年前に確かに1粒の光から宇宙が生まれてきたことを表している事です。しかも、それは原因のない始まりだったことが分かるそうです。これから太陽は冬眠の状況になりますから、地球が氷河期になることが想定されています。
・核酸と言う物質
地球では水素、酸素、星で作られた炭素、窒素、鉄などが出来上がってゆきます。これから核酸が出来てきます。この核酸が神経のネットワークの中で分子集団に変化が起きると記憶になります。記憶ができるということは、現在と過去を分けることができます。それはつまり、現在と未来を分けることが出来ます。そうすると時間と言う概念が出来上がってきます。その時間と言う概念のおおもとになるのが、こころというものです。そして、自分の未来はどうなるのだろうか?と考えるわけです。
・こころはどうして出来てきたか?
人間が立ちあがるようになったから大きい脳を持つようになり、こころを持つことが出来るようになりました。しかし、立ち上がることによって骨盤が狭くなったので、子供を必要な時間だけおなかに入れておくことができずに早く産まなければならなくなりませんでした(人間は未熟児で産まれてきている)。だから人間は学校で教育を受けなければなりません。人間だけ産まれて来たときには自分ひとりでは生きられない状態です。人間は一人では生きられない。だから集団を作るようになるわけです。その集団を侵略するものがあればその集団を維持するために自分の命と引き換えに戦争をします。だから、人間の世界から戦争はなくなりません。戦争はやめようとして止められるものではありません。では、どうしたら止められるのか。それは人類の進化の途中で何ゆえにあなたは戦うのか、そういうことを科学の立場から理解することによって、そこを出発点としてどうしたら良いのかということが出てくるでしょう。それがリベラルアーツです
以下、私の感想。
大陸では隣り合う国同士が資源や地の利などから領土を広げようと戦争をしてきました。戦争から自国を守ると言う大義で権力者が戦争を利用したり、政治を利用したり、宗教を利用してきました。宗教には他の宗教を受け入れるということはあまりありません。博愛の宗教、助け合う宗教、好戦的な宗教など色々あります。このような宗教の創始者や権力者が、もし、スペースシャトルに乗って宇宙から地球を見ることが出来ていたならば、自説にこだわらず、広い心で思想が形成されたのではないかと想像いたしました。この講義の後で薄羽さんが中心となって30人程の人たちで先生を囲む懇親会を行いましたが、参加者の1人の京さんが、10年ほど前に考えたこととして、サミットを宇宙で開いたら有意義なものになるだろうということを披露して頂きましたが、私も同感です。
・人間らしさとは
人間とは分かち合うことが出来るものです。その辺りの事を絶妙に言っているのが宗教です。特にキリスト教などはまさにそのとおりです。「理解されるより、理解することを求めさせてください。愛されるより、愛することを求めさせてください。それは与えることによって、与えられるからです。赦すことによって、赦されるからです」。人間は環境に適用するために耐えることが出来ます。ところが、環境の変わり方が早すぎるために適応できないので、耐えることが出来なくなっているだけの話です。そこに気がつく必要があります。
・事業をするためのマネージメント
佐治先生は松下にいたときに1兆円を売り上げました。そのうち、扇風機で500億円売り上げました。そのときのマネージメントですが、ビジョンをいかに持つか。次にビジョンを理念に変える。理念に変えたら組織がどうあらねばということが決まる。組織が決まればタイムスケジュールが決まってきます
・真昼の星
先生の本日のクリスマスギフトとして北海道の陸別にある銀河の森天文台で115cmの望遠鏡でとってきた青空の中での真昼の星を撮影されたものを見せて頂きました。先生は金子みすゞさんの「星とたんぽぽ」という詩を紹介されました。
青いお空の底ふかく、 海の小石のそのやうに、 夜が来るまで沈んでる、 昼のお星は目に見えぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。
常時昼の星を観測できるのは銀河の森天文台と旭川の天文台です。そして毎週木曜日に観測できるのが玉川大学の天文台です。

以上が、本日の佐治晴夫先生のお話で、持ち時間の20:30を過ぎて21:00過ぎまでお話して頂きました。
その後、場所を51階の六本木ヒルズクラブに移動して、30人ほどで先生を囲む懇親会があり、参加させて頂きましたが、先生のお話は尽きませんでした。先生は夜通し話しても良いとおっしゃって頂き、予定の23:00を過ぎても楽しいひと時があっという間のようでした。
・推薦書籍のご紹介

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2010年12月4日土曜日

Visionary Institute 2010 World Cafe 第9回 「成功の法則」とはどのようなことですか?参加報告


Visionary Institute 2010 World Cafeの第9回は、的川泰宣氏の”飛翔のイノベーション”未来を開発する宇宙探索というセミナーを受けて、私たちにとって現在、未来での「成功の法則」とはどのようなことですか?そしてそれを実現するためには「何」が大事ですか?について、株式会社エムシープランニング代表の薄羽美江さんのファシリテートにより対話を行いました。
寺沢さんによる的川泰宣氏のセミナーの報告
毎回、その回の題材となるセミナーのサマリーを薄羽さんがされているのですが、今回はメンバーにJAXAで宇宙線が人体に及ぼす影響を研究している寺沢さんがいて、寺沢さんが今回の説明を薄羽さんに申し出てくれました。寺沢さんは研究の傍ら、日本科学未来館などで来館者へのセミナーをやられているようなので、人に教えると言うことが身についておられるように感じました。寺沢さんの発言は最近で印象に残っているのは、第7回では母なるものとは”積分”である。父なるものとは”微分”である。第8回では未来に大事な能力として、コミュニケーション、強調、自己愛、喜怒哀楽、慮るなどの意見がでるなか、あえて反対意見を言って問題点を洗い出してゆき、結果として高めあってゆく。第9回である今回は成功の反対は失敗ではない。何もしないことだ。などでした。
解説は「はやぶさ」が宇宙から地球へ帰還してオーストラリアの上空で燃え尽きる写真から始まり、続いて、ロケットで打ち上げられたときから、色々の故障をしてゆく経過を説明され、ついには生命線の通信がとだえてしまい、さすがに、今まで色々な故障を繰り返してきてもなお、飛びつつけている「はやぶさ」を信じてきたチームも絶望になりながらも、通信を続けていった様子が説明されました。何とか通信が戻ったのですが、通常の通信が出来ない状況で、「はやぶさ」の5年前に打ち上げられた火星探査衛星「のぞみ」での1ビット通信(2進数の世界で1桁は1か0、つまり、"yes"か"no"。例えば息子にどこにいる?とは聞けないので、今、学校にいる?答えは"no"を延々と繰り返して場所を絞ってゆくとても辛抱のいるやりとりです)と言うノウハウが生かされることとなり、「はやぶさ」の制御が可能となった。地球に帰還した「はやぶさ」が燃え尽きる前に送ってきた宇宙から見た地球の映像は霧がかかったような画像だったが、その画像の状態が「はやぶさ」の痛々しい姿を物語っていてすばらしかった。
それにしても、的川泰宣氏の「はやぶさ」のまるで人間模様のようなお話は、薄羽さんも言っておられましたが、会場では多くの方が感動し、目頭が熱くなる人が見られました。私も、父が亡くなったときには涙もでなかったのですが、このようなお話にはつい目頭が熱くなっていました。全て印象深いお話ですが、女性には特にあたかも子供のようなカプセルを育てて、母親は燃え尽きてゆくというところに感動したようです。私は「はやぶさ」を送り出す直前に、4つのエンジンに何か障害があったときのために、それぞれのエンジンの使えるところを組み合わせて使えるようにしていたことと、3つあった姿勢制御用の機器が全て故障した状況で機転を利かして推進用のエンジンを姿勢制御にも使った技術者のおかげで姿勢制御が可能となり、その前に不完全ながら回復した通信とそれを使った地上のエンジニアの習得した制御技術、これら全てが重なって地球に帰還できた、このチームワークに感動しました。ここには多くの困難とそれを乗り越えた大きな成功があったわけです。
人間模様といえば、燃え尽きる「はやぶさ君」を思い、5歳の少女が手紙を書き、それをお父さんがJAXAへ送ったそうですが、その手紙が紹介されておりました。以下、「あすかははやぶさ君が大好きです。でも、はやぶさ君がもうじき消えてなくなるという話を聞きました。でも、あすかははやぶさ君が大好きなので、一生、はやぶさ君のことを思い続けます」。
そして的川先生はお話の最後で以下のようにまとめられました。
幼い共感と感動が未来を作る
小中学校は高校の準備だけではない。「命を輝かせる最も大切なチャンス」を身に付ける時期である。
・毎日毎日が人生でもっとも大切な時期である可能性が高い。
・着眼大局 着手小局
そして、最後に「適度な貧乏」。これが「はやぶさ」が成功した原動力だったようです。
私も当日の的川先生のお話をお聞きしてその感想をこのブログの別の回で記録しておりますので、ここをクリックしてご欄頂ければと思います。
今回の対話は、この「はやぶさ」プロジェクトには教訓とするべきものが多く有ったので、ここでの多くの失敗と大きな成功を頭に入れつつ、成功するには何が大切かを話し合いました。


各グループ発表のまとめ
薄羽さんがこのように磁石で貼り付けるホワイトボードに、各グループのまとめを聞きながら書き留めるということを始めたのはここ2-3回前からなのですが、多分、皆さんそう思うと思いますが、「字がきれい」、「瞬間的にキーワードをつかんで簡潔にまとめるのは、すばらしい」、「漢字を一杯知っていてすぐ書ける(対話の中で、皆さん異口同音に漢字を忘れてしまったのでひらがなで書きますけどいいですか?というような話があちこちでされています)」。WorldCafeではテーブルクロスにその場で書きながら対話を深めてゆき、テーブルを移動して色々な意見と出会うというのが、第一義的に重要ですが、その場で振り返って全員で共有しあうというのが更に大事だと思います。また、わたしのように何日も日を置かずに皆さんが見れるようにまとめを作って振り返れるのも大切だと思います。また、毎回参加された方から薄羽さんにメールで送られた各グループでの感想なども貴重で、これが皆さんで共有できたらいいのにと思っていましたが、参加者がログインして見れるWikiサイトを曽根さんが運用しておられるので、総合的に有機的に結びついた良い企画だと思います。


各グループのまとめを図式化してみました


Aチーム発表
かおるさんの発表
成功には何が必要かを考える上で、成功と失敗を対比して考えてみました。つまり、
成功への希望 と 失敗への恐れ
いけないこと: 失敗は恐れてはいけない
なぜいけないか: 失敗を恐れてチャレンジしないと失敗の副産物をえることができない
何が必要か: 自信が必要
何が重要か:リスクをとるマインドやチャレンジが大事
自信を得るには: 成功するにはやり続ける不屈の意思
やり続けるには: 小さな成功の積み重ねにより、成功の確度を高める
Aチームは、京さん(男性)、国際ホスピタリティ研究センターの青柳さん(男性)などがいる強力チームですね。



Aチームのテーブルクロスを図式化してみました


Bチーム発表
寺沢さんの発表
「成功」の反対は失敗ではなく、「何もしないこと」だと考えている。
失敗は成功のもと。失敗を積み重ねることにより成功に近づける。
成功の定義は人まちまちで、自分で決めればよいこと。
だから、自分が楽しいことを続ければよい。
新しいことを始めると必ず失敗するので、あきらめないことが重要。
自分の本業以外のことをすると、自分の本業が新鮮な目で見られる。好奇心が大事。
人の話を聞いていると常に出るキーワードが好奇心ということなので、やはり好奇心が大事だと思います。
小さい成功を積み重ねてゆくことが大事。
Bチームには寺沢さん(男性)、清水さん(女性)などがいる思いの強いチームですね。初めての方(女性)がお一人おられたようです。


Bチームのテーブルクロスを図式化してみました


Cチーム発表
曽根さんの発表
チームとしての成功 と 個人個人の成功
個人個人なら自分が好きなことに熱中すればよいのかもしれないが、チームとしては、チームとして熱中できるものをだれかが持ち込まなければならない。チームの大きな目標をきちっととらえて、そこに向かってゆく中でこまかく方向転換をして成功を目指すようにする。
CチームにはVisionary Instituteの仕掛け人の一人である曽根さん(男性)、久しぶりの伊藤さん(男性)などのチームです。


Cチームのテーブルクロスを図式化してみました


Dチーム発表
片山さんの発表
一番大切なこと: あきらめないこと。これがないと成功に導かない。
あきらめないと言うことは: 「光」があることです。
これを実現するのになにが必要か: ポジティブでいなければならない。つまり、前向きでいること。
前向きでいるためには: 楽観的でなければならない。
楽観的だからといって中途半端ではなく、本気で、命がけで頑張らなければならない。本気で生き抜くことが大切。
そして、皆で「夢」を持つて頑張ることが大切。
片山さんの発表が終わると、京さんから「何かわからなかったけど、元気になりましたね。」とか、女性から「すごい素敵だった」とか、「皆に元気を与える」という声があがりました。励まされるような発表ありがとうございました。
私たちDチームは、何回か参加されている片山さん(女性)、初めの頃から参加されている玉川大学の天文台を守っている潮木さん(女性)、Facebookですばらしい場所や気に入った情報などを画像で提供している石橋さん(男性)、そして小城でした。潮木さんによると、12月21日(火)の16:30ころから東の空では皆既月食がみられるそうなので思い出したら、この時間には仕事の手を休めて東の空を見上げてみてください。


Dチームのテーブルクロスを図式化してみました


Eチーム発表
ワールド・カフェが初めての方が二人いて、この方から5秒で結論が出たと言って、言われたことが最後まで対話の柱になりました。
やりたいこと好きなことを見つける
そして、やりたい事をやり続ける信念と力を持つことが大切です。
やりたいことをみつけるのは難しいですね。それには好奇心が必要。
日本人はなかなかチャレンジをしなくなっている。チャレンジをするためには、チャレンジするための教育は重要だ。
好奇心から成功を重ねて自己愛、自己肯定/他者肯定をしてやり続けるというサイクルが回ってゆくことが重要。
Eチームは高野さん、曽田さん、藤原さんなど、他の方のお名前は覚えておりませんが、初めての方が二人おられたチームです。


Eチームのテーブルクロスを図式化してみました


薄羽さんからの総括
薄羽さんが的川先生の講演で心に残った2つの言葉について話されました。1つは講演の最後のほうにおっしゃった言葉に「小学校5年生の時が大事だったんではないかな」。その頃に本当に好きなことに出会って、諦めない不屈の精神をもつようになることが大事であるということでした。私の5年生の頃は毎週、戸塚から秋葉原に出かけていって、電子パーツ屋さんで小さな皿にダイオード1つ、抵抗1つ、コンデンサー1つ等とユニバーサル基板など必要な部品を買い集めて、よく火傷をしながらハンダごてで電子製作をしていたことを思い出しました。的川先生は、今では衛星などのプロジェクトを手がける科学者ですが、子供の頃には、つぶしがきくからと、父親から法律家を目指しなさいと言われたそうですが、それに反発して工学を目指したそうです。
2つめは、プロジェクトは一生に一度チャンスが巡るかどうかである。参加している技術者は、このプロジェクト自体は7年前に始まったわけですが、そのプロジェクトに入る前の大学院生のころから続けてきたことが、このプロジェクトに結集したわけで、その強い思いがあったからこそ、4つのエンジンを裏でつないでいて、それぞれをパーツとして組み合わせるということをしたわけです。それ自身は、長年の研究の成果としてすばらしい設計でしたが、はやぶさを衛星に載せる少し前の設計変更をしてはいけない時期に、ぎりぎりまで方式を考え抜いて出した結論が、やっぱり、4つのエンジンをつないでおこうということでした。それでメーカーの方と相談して、線でつなぐと重さに影響が出るので、ダイオードでつなぐという方法でそれを実現したようです。ルールでは、してはいけない事をしたわけですが、それを聞いた川口淳一郎プロジェクトマネージャは、それを責めることなく、そして見事に日本の宝、誇りが誕生したわけです。プロジェクトのメンバー一人一人の責任感とそれを信頼してまとめているリーダーだからこそ実現出来た結果でした。
ぜひ皆さんも小学校5年生の頃を思い出し、しかし、一方では与えられている今の場と言うものの中では、一人一人は何にチャレンジし、チームとしてはなにを目標にして熱中しているかをはっきりさせることが大事です。日本人がチャレンジすることを見失いつつある今、チャレンジする心を持たせる教育という事が大事なのではないか。見守ると言う大局的な心が大事ではないか。


今日のサプライズは、学校の先生をされている清水さんが少し早いクリスマスプレゼントと言うことで、トゥインクル、つまり2つの星の形に焼いたクッキーを2つずつラッピングして参加者の方々のために持ってきてくれました。ずっと眺めていたかったのですが、誘惑に負けて食べてしまいました。おいしかったです。ありがとうございます。
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次回のセミナーは最終回で「私たちはどこからきて、どこにいくのだろう」という非常に哲学的な題で、12月最後のクリスマスレクチャーです。講師は宇宙創生の揺らぎについては第一人者の佐治晴夫さんにお話頂きます

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2010年11月26日金曜日

Visionary Institute - 2010 Seminar 第8回 的川泰宣氏による「飛翔のイノベーション -- 未来を開発する宇宙探索」サマリー

本日のVisionary Institute - 2010 Seminar 第8回はJaxa名誉教授の的川泰宣氏による「飛翔のイノベーション -- 未来を開発する宇宙探索」でした。先生のお話は一言で言って、日本人、日本の若者に元気を与えるような感動的なお話でした。先生は「小惑星探査機 はやぶさ物語」にその多くにエピソードを書かれていて、多くの人に読まれているのですが、やはり、ご本人のやさしい肉声でお話しされるのを聞いていると、そのお人柄に触れられて素晴らしい時間を過ごすことができました。家に帰ってすぐ、高校生の二男にこのエッセンスを話して、励ましました。「若者よ頑張れ」。

さて、お話を順に思い出して書き連ねてゆこうと思います。
まず、「はやぶさ」は2003年5月9日に打ち上げられました。当初4年で帰還する予定が、色々なトラブルの結果7年かかって帰ってきました。設計では、4年で戻ることを想定した耐久性だったそうで、7年たって帰ってきても帰還できないのではという不安があったそうです。

先生が「はやぶさ」の話をされると、偉業への賞賛の声よりは「共感」や「共鳴」を感じたという声が多かったそうです。つまり、何度となくトラブルに遭遇しながら、それを乗り越えて目的を達成した後、自らは燃え尽きて果てるという壮大な物語に共感したようです。

お母さんからは、「はやぶさ」は、お母さんのように自分だけがバラバラになって、産んだ子だけが育っているという声も聞かれたようです。設計では「はやぶさ」は大気圏に突入して燃え尽きるのではなく、役割を終えたら本体のガスジェットを使って大気の外に出して、その姿をとどめようとしていたそうですが、ガスジェットの燃料を使い切ってしまったので、それも叶わず、大気圏に突入して燃え尽きたということでした。


宇宙の岩石を持ち帰る対象の衛星を、なぜ「糸川」にしたかというと、糸川は500m位の大きさで、熱変性していないので、出来た頃の岩石成分がそのまま残っている可能性があったからだそうです。大きい星では、太陽の熱などを受けてその岩石成分が変性してしまっている可能性が高いそうです。

「はやぶさ」の命名のエピソードとしては、はやぶさという鳥のように目がよく、狙った獲物を捕まえて帰ってくると言う様子に似ているのでこの名前にしたそうです。しかし、的川教授は「アトム」という名前にしたかったそうですが、チームの人たちの意見に勝てずにこの名前を受け入れたそうです。

「はやぶさ」という鳥のようにすばやく行動してと行きたいのですが、地球からどんどん離れてゆく「はやぶさ」に電波が届くまで15分以上、そしてそれを受けて、それに応えてきた電波が地球に届くのに同様に15分以上かかるということで、星にぶつかるとか分かるにに15分以上、対処するように指示を出して伝わるまでに15分以上と、とんでもなく制御が難しいと言う点は、自分で判断して行動するというプログラムを与えて切り抜けようとしたわけです。その、判断しなければならない状況を考えれるだけ想定して、それらに自らの判断で対応できるようにしたわけです。これも、「はやぶさ」の世界初の試みで、それが成功の一因だったわけです。

さて、実は「はやぶさ」は実験システムで、将来の実用化に向けての実験のためのもので、「はやぶさ」の目指した技術は以下のとおりでした。

①イオンエンジン(今までのエンジンと違い、ものを燃やさないエンジン)を行き、帰りのためにのみ使う。
②姿勢制御は3軸をそれぞれ制御するための3つのこまと、姿勢制御の推進力を付けるためのガスロケット。
③着陸-サンプル収集-離陸という世界初の動きをさせる。今まで着陸するだけと言うのはあったが、離陸して戻ってくるというのははじめての試み。
④地球帰還。大気に突入する際に表面は3,000度以上になるが解けそうになっては固まり、また解けそうになっては固まりというのを繰り返しながら、しかし、解けないカプセルの中は50度程度に抑えることが出来た。

これらの実験の結果、分かったことは、どんなに志が高くとも、技術力がなければうまく行かないと言うことが実証された。

これらの成果は、科学雑誌として有名なSCIENCE1冊に「はやぶさ」の特集号が組まれて発表されました。

これらの試みでは新しい技術が考案されたが、それらは皆、若い人たちの議論から出来上がってきて、若い人たちはチャンスを与えて、本人の志が高ければ、大きな心を持つ人が育つというのを実感したようです。
つまり、現場が人を育てるという実感が持てた瞬間だったようです。

最終的には「はやぶさ」は4つあるエンジンの4つとも故障してしまいました。4つのエンジンはイオン源と中和器がありますが、それが対ではじめてエンジンとして使えます。エンジンを設計したエンジニアは「はやぶさ」を送り出す直前に、4つのエンジンに何か障害があったときのために、それぞれのエンジンの使えるところ(つまり、4台の1つのエンジンのイオン源と別のエンジンの中和器)を組み合わせて使えるようにしていたことと、3つあった姿勢制御用の機器が全て故障した状況で機転を利かして推進用のエンジンを姿勢制御にも使った技術者のおかげで姿勢制御が可能となり、その前に不完全ながら回復した通信とそれを使った地上のエンジニアの習得した制御技術、これら全てが重なって地球に帰還できました。


「はやぶさ」と地球のオペレーションとの命綱は通信ですが、色々なトラブルの1つとして通信できないと言うトラブルがあったそうです。そのときには、今までの衛星技術の経験から、通信が完璧でなくわずかな情報しか扱えない場合、その最低限の情報が1ビットだそうです。この1ビット(1か0、yesかno)などの情報を少しずつ交換しながら推定して言って確実になるという果てしなく時間のかかることを忍耐強く続けて、最低限必要なオペレーションを遂行できたわけです。

そして、「はやぶさ」の燃え尽きる前の最後の仕事は宇宙から地球の写真を送ってくることでした。これも無事成功しました。

この燃え尽きる「はやぶさ」をいとおしく思ったのは母親の方たちだけでは有りませんでした5歳の少女もはやぶさを「はやぶさ君」と呼び、「はやぶさ君」へ手紙を書きました。それをお父さんがJAXAへ送ったそうですが、その手紙が紹介されておりました。以下、「あすかははやぶさ君が大好きです。でも、はやぶさ君がもうじき消えてなくなるという話を聞きました。でも、あすかははやぶさ君が大好きなので、一生、はやぶさ君のことを思い続けます」。

お話の最後は以下のようにまとめられました。
幼い共感と感動が未来を作る
小中学校は高校の準備だけではない。「命を輝かせる最も大切なチャンス」を身に付ける時期である。
毎日毎日が人生でもっとも大切な時期である可能性が高い
着眼大局 着手小局

そして、最後に「適度な貧乏」。これが「はやぶさ」が成功した原動力だったようです。アメリカでの衛星の開発には500億円程度かけられるのですが、日本の場合、150億程度で、全くの貧乏ならば衛星など作るには資金がなかったわけです。そんなことから、適度な貧乏があれば、少ない資金でどうにかしようと努力するわけです。




























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